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誹謗中傷の重要知識

名誉感情侵害とネット誹謗中傷

インターネットに悪口を書き込まれたとき、とっさに頭に浮かぶのは「名誉毀損」という単語でしょう。
名誉毀損に似ているものの、その内容や判断基準が異なる権利侵害として「名誉感情侵害」があります。

いったい、名誉感情とはどのようなものなのか、名誉感情侵害として法的請求が認められるのはどのような場合なのか、名誉毀損などと比べながら説明します。

1.名誉感情とは

最高裁判所は昭和45年12月18日の判決で、名誉感情とは「人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価」だと述べています。

自分の価値についての意識、要するに「自尊心」「プライド」です。
他人のプライドを傷つけるような人格攻撃、誹謗中傷は、名誉感情侵害を引き起こす可能性があります。

2.名誉毀損との違い

名誉毀損と名誉感情、それぞれの「名誉」の内容・性質は異なっており、成立範囲も厳密には区分けされています。

(1) 自己目線か他人の目か

名誉感情は、自分が自分に対して持つ肯定感です。感情的・主観的な評価と言えます。
それに対して、名誉棄損というときの「名誉」は、他人が自分をどう見ているのかについての社会的・客観的なものを指します。

昭和31年7月20日に最高裁が判決で示した定義では、「名誉を毀損するとは、 人の社会的評価を傷つけること」とあります。
人は他人とのかかわりあいの中で生きていますから、社会生活を送るうえで他人からの評判が悪くなると、生活に支障が出てしまいます。そうならないよう社会的な評価を守るための権利が名誉権であり、評判を傷つけるような誹謗中傷が名誉棄損となります。

名誉棄損における名誉とは、他人からの評価を指すものであり、自分が自分に対して持つ名誉感情とは、外面か内面かという点で決定的に異なっているのです。

(2) 権利侵害となる条件の違い

名誉感情と名誉棄損における「名誉」の違いは、権利侵害が成立するかの判断基準にも影響を及ぼします。

名誉毀損に基づく請求の条件として、実務上、誹謗中傷の中で「真実ではないこと」が書き込まれていることが必要となります。
逆に言えば、証拠で真実かどうか証明できないような主観的な評価、たとえば「バカ」「不味い」「下手」といった言葉それ自体だけでは、なかなか名誉棄損だとして裁判所に発信者情報開示請求や損害賠償請求を認めてもらえないのです。

一方で、名誉感情侵害は、事実を指摘したかどうかは関係ありません

もっといえば、指摘した内容が真実そのものであり、評価としても妥当であったとしても、書きぶりや背景事情からして極端に攻撃的で他人の人格を傷つけるようなものであれば、名誉感情侵害となりえるのです。

3.侮辱罪との違い

名誉感情を害する行為は「侮辱」とも呼ばれます。
刑法にはその名の通り「侮辱罪」があります。では、名誉感情を害すれば犯罪に問えるのかというと実はそうとは限りません。侮辱罪が問題とするのは社会的評価の低下なのです。

名誉毀損も刑法で犯罪となっているのですが、事実を述べて社会的評価を低下させる誹謗中傷が対象です。
それに対して侮辱罪は、事実を述べずに社会的評価を低下させることで成立します。

まぎらわしいですが、犯罪となるかどうかと損害賠償などができるかどうかは別です。
この区分に応じて、名誉棄損と侮辱の内容も分かれています。

その中で名誉感情は、「主観的な感情が害されたことを理由として」「損害賠償請求ができる」権利という立ち位置にあるのです。

[参考記事] 侮辱罪とは|侮辱罪にあたる言葉などの事例

4.名誉感情侵害が成立する条件

名誉感情が侵害されたとして法的請求が認められるには、誹謗中傷が常識の範囲を超えてひどいと言えるかが問題となります。

(1) 判断基準

最高裁判所は、平成22年4月13日の判決の中で「社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められる場合」には名誉感情侵害が認められるとしています。

社会通念とは「一般常識」というような意味です。しかし、これでは基準としては曖昧すぎるとして、その後に各地の地方裁判所がより具体的な判断を示しています。

たとえば、さいたま地方裁判所の平成29年7月19日判決では、「誰であっても名誉感情を害されることになるような看過しがたい、明確かつ程度の著しい侵害」、つまり普通の人なら誰もが不快になるようなあまりにひどい侮辱行為がされたときに名誉感情侵害に基づく法的請求ができるとしています。

(2) 判断方法

名誉感情侵害を判断するうえでは、前後の書き込みの内容・書き込みがされた経緯などといった文脈を組み込んで判断できるとされています。
この枠組みは誹謗中傷の違法性を検討するために多くの場面で用いられているものです。

さらに、横浜地方裁判所川崎支部の平成29年4月27日判決が以下のような判断ポイントとして具体化しています。

  • 特定の者(被害者)に対する問題とされる言動の内容
  • 前後の文脈
  • 当該言動の態様(手段・方法)及び状況、特に当該言動がされた時期・場所
  • 公然性の有無
  • 当該言動の程度、特にその頻度・回数
  • 当該言動に至る経緯とその後の状況、特に当該言動の前後にされた被害者による加害者に対する言動の状況
  • 当該言動に係る当事者の関係、年齢、職業、社会的地位等
  • 当該言動の動機、目的、意図等

社会通念、つまり常識で判断するには、問題となる発言だけを取り上げても不十分です。
投稿された掲示板やSNSのタイムラインの流れ、発言回数やお互いの関係、動機なども含めてあらゆる事情をまとめて考える必要があるのです。

上記の横浜地裁の判断では明言されていませんが、名誉感情侵害に影響を与える事情の中でも少し特殊なものが「同定可能性」です。

(3) 同定可能性は必要か?

同定可能性とは、投稿を読んだ人が誰についての書き込みなのかわかることです。

[参考記事] 同定可能性とは?権利侵害の要件

名誉棄損などでは同定可能性も成立条件の一つとなっています。誰のことを指して悪口を言っているのか読者にわからなければ、社会的評価は低下しないからです。

しかし、名誉感情で問題となるのは主観的評価であり、個人の内心、感情です。被害者以外の認識がどうあれプライドが傷つけられれば名誉感情侵害は成立するのではないでしょうか。

実際、名誉感情侵害では同定可能性は必ずしも必要ではないと裁判所が判断したことがあります(福岡地方裁判所の令和元年9月26日判決)。

もっとも、同定可能性は言い争いが訴訟合戦に発展しないようにするための歯止めとして重要な条件です。理屈の上で正面から条件にはならないとしても完全に無視すべきではありません。

その点を考えてか、福岡地裁判決は「対象者を同定できるかどうかは、表現が社会通念上許容される限度を超える侮辱行為か否かの考慮要素となるにすぎない」としており、同定可能性は誹謗中傷がどれだけひどいものか判断するためのポイントの1つに含めてバランスを取っています。

5.名誉感情侵害をされた場合の法的請求

名誉感情侵害を理由とした削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求ができます。

(1) 削除請求

名誉感情侵害をなくしたいのであれば、投稿の削除が第一の手段となります。

削除請求権は主に人格権が侵害されたときに認められます。
名誉感情は主観的な利益とはいえ個人の人格に伴うものですから、人格的利益のひとつです。

サイト管理者が任意の削除依頼に応じなかったときは、裁判所に対して名誉感情侵害に基づく削除を請求できます。

[参考記事] 削除請求をする際の注意点

(2) 発信者情報開示請求

投稿者を特定するために、いわゆるプロバイダ責任制限法により定められた権利が発信者情報開示請求権です。

名誉感情も発信者情報開示請求ができる権利として認められていますので、名誉感情侵害を理由とした発信者情報開示請求は可能です。

[参考記事] ネットで誹謗中傷した犯人(投稿者)を特定できる?

(3) 損害賠償請求

相手を特定した後は、損害賠償請求することになるでしょう。

慰謝料の相場は、名誉感情侵害では1つの投稿につき10万円程度です。
残念ながらさほど高額とは言えない金額ですが、度重なる悪口の多くに名誉感情侵害が認められれば、金額が積み重なっていく余地はあります。

特に特定の加害者が執拗に書き込んでいれば、悪質性が高いとして名誉感情侵害が認められやすくなると同時に、賠償額が増えると見込まれます。

[参考記事] 名誉毀損で慰謝料請求したい|請求の要件・金額の相場

(4) 刑事告訴

侮辱罪との区別でも触れましたが、名誉感情侵害は犯罪とはなりません。

もっとも、実際には名誉感情を侵害するような投稿は、社会的評価も同時に傷つけるものになりがちですから、名誉毀損罪または侮辱罪として刑事告訴できるケースも多いでしょう。

6.まとめ

名誉感情侵害は名誉棄損とともに誹謗中傷対策を理由づける重要な権利侵害ですが、その成否は様々な事情を総合考慮する必要があり、法的請求の見通しを立てるには専門家の助言が大切となります。

ネットの悪口でお悩みの方は、ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。

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