爆サイの書き込みを削除したい・投稿者を特定したい場合の手続
爆サイ(爆サイ.com)は、2ちゃんねる・5ちゃんねるのような大手匿名掲示板の一つです。
2020年には月間で10億PVも記録していたことから、多くの方が利用している人気掲示板サイトであることがわかります。
細かな地域ごとに掲示板が分かれているうえ、ニュース、芸能の他、風俗関連のトピックを重視しているため、誹謗中傷が書き込まれると現実の生活やプライバシーに悪影響を与えやすく、その対策には迅速さが求められます。
ここでは、爆サイに誹謗中傷が投稿された際の削除請求や発信者情報開示請求のポイントについて説明します。
なお、2022年10月1日から施行された改正プロバイダ責任制限法により、今後適切な対処方法が変わってくる可能性もあります。
1.削除請求
爆サイは、被害者本人からの削除請求にも応じますが、投稿が削除されると投稿者特定が非常に困難になってしまいます。
発信者情報開示請求もご検討されているならば、まずは弁護士にご相談ください。
削除請求の方法は主に以下の3通りです。
(1) 削除フォームからの削除依頼
投稿が書き込まれたスレッドにある削除フォームから、爆サイ運営に対して投稿の削除依頼をすることができます。
依頼にはログインが必要です。アカウントをお持ちでない方はフォームの案内に従い新規アカウントを作成してください。
各スレッドやレスが表示されている一番下の「削除依頼」をクリックして、削除フォームの内容に従い、必要事項を書き込み送信します。
必要事項は、スレッドNo、スレッドタイトル、レス番号(スレッドごと削除したい場合は「0」を入力)、通報区分、名前(任意)、メールアドレスとなります。
また、削除理由も記載する必要があります。
もっとも、削除依頼をした場合にすべての依頼が認められるわけではありません。表現の自由との兼ね合いから、内容に理由があると運営が判断した場合にのみ削除が行われます。
削除を確実にしてもらうためには、削除フォームで記入する「削除理由」の内容が重要となります。
爆サイでは、利用規約に反する書き込みに削除対応をします。つまり、利用規約に反していることを削除理由で示さないといけません。
「不快だ」という理由のみで削除を依頼しても対応してもらえませんので、この点は理解しておきましょう。
爆サイの禁止事項としては、以下の「第3条【禁止事項】」に記載されています。
引用元:爆サイ.com|利用規約
運営元は多くの削除依頼を受けていることから、削除までは一定の時間がかかります。
公式情報では、依頼内容に理由があれば72時間以内に削除対応を行うことが書かれていますが、1週間程度を目安に考えておくほうが良いでしょう。
(2) 送信防止措置依頼書
他の匿名掲示板やSNSはメールやフォームによる削除請求をしても受け付けないことが多いものですが、爆サイは比較的、フォームからの削除請求にも対応する傾向があります。
もっとも、最近は削除を拒否する姿勢を強めていますから、送信防止措置依頼書を利用した請求も検討しましょう。
送信防止措置依頼書は、いわゆるプロバイダ制限責任法を受けてインターネット関連団体が作成した書式です。
削除フォームからの請求と同じく裁判手続を利用しない任意請求ではあるものの、公的性格があるため爆サイ運営が削除に応じる可能性は高まります。
爆サイでは「弁護士・法務関連の申告窓口」で、送信防止措置依頼書による削除請求を受け付けています。
窓口サイトの名前を見ればわかるように、送信防止措置依頼書はより専門性の高い書類です。
本人で作成することもできますが、できれば弁護士に相談してアドバイスを受けるか、作成を依頼しましょう。
(3) 非訟事件手続
送信防止措置依頼書による請求でも爆サイ運営が削除対応をしなかったとき、裁判所を用いた強制力のある法的削除を検討します。
裁判ですと時間がかかってしまいますので、裁判所が紛争を後見的立場から処理する非訟事件手続を利用します。
裁判所に申し立て、1~2か月以内で削除するよう決定が出るでしょう。
2.発信者情報開示請求
匿名の投稿者を特定して、損害賠償請求をしたいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
投稿者の住所氏名を明らかにして損害賠償請求などをするには、まず、爆サイからIPアドレスなどの開示を受ける必要があります。
爆サイは匿名掲示板ですから、投稿者の個人情報を持っていません。住所氏名などを保有している可能性があるのは、投稿に用いられたインターネット回線を契約している通信会社です。
通信会社を特定し、その通信会社に裁判で住所氏名を開示するために必要な情報を開示するよう、爆サイに対して請求します。
任意請求・法的請求のいずれも利用できますが、爆サイから十分な情報を受けられない、開示が遅れたなどの理由で投稿者特定が困難となるリスクも高く、開示請求するかは慎重な検討が必要です。
(1) 発信者情報開示請求書
多くのサイトは任意請求による発信者情報開示に応じず、非訟事件(改正前は仮処分)がほぼ必須となっています。
しかし爆サイでは、送信防止措置依頼書と並ぶ書式である「発信者情報開示請求書」による任意請求でも、IPアドレスなどの開示を受け付けています。
もっとも、任意請求では2ヶ月ほど時間がかかってしまいます。
ドコモなどスマホ関連の通信会社は住所氏名の特定に必要なログ(通信記録)を3ヶ月程度で削除してしまうことがほとんどですので、投稿から1か月以内に爆サイに開示請求をしないと、ログ保存期間に間に合わず住所氏名を特定できなくなるリスクがあります。
(2) 発信者情報開示仮処分
爆サイ相手でも、他のサイトと同じように裁判所を通じた非訟事件手続が利用できます。
段取りよくいけば、1ヶ月以内でIPアドレスなどの開示を受けられる可能性があります。
ただし、爆サイの運営状況は不透明なところがあるため、手続がうまくいかずに発信者情報開示請求書を用いた場合と同じ程度の期間がかかってしまうリスクも否定しきれません。
費用や投稿日時などを踏まえ、安全策として発信者情報開示請求書による開示請求と併用するかご検討ください。
3.違法な権利侵害の確認ポイント
削除請求にせよ発信者情報開示請求にせよ、投稿内容が違法に権利を侵害することが条件となります。
名誉棄損やプライバシー侵害などの人格権侵害が主な理由付けとなるでしょうが、その際に爆サイの特徴と関連付けて説得力ある主張を展開することが大切です。
(1) 地域密着型
爆サイの大きな特徴の一つに、ごく限られた地域の話題をピックアップしていることがあげられます。
南関東、北関東など地域ごとに掲示板への入り口が別々となっているだけでなく、市町村ごとの雑談掲示板も存在しています。
インターネットは日本中、下手すれば世界中に情報が届いてしまいますが、そのために多くの情報に埋もれてしまいますから、誹謗中傷が現実生活にすぐに響くとは限りません。
しかし、爆サイのように投稿者や閲覧者が地域により限定されてしまうと、周囲の人たちに誹謗中傷を見られてしまうのではないかという不安が強くなってしまいます。
一方で、話題が地域的に限定されている中で誹謗中傷が行われている場合、人格権侵害の成立条件である「同定可能性」が認められやすくもなります。
「投稿内容で名指しされている人が、現実の被害者の方であるとわかること」が同定可能性です。
その有無の判断は、同姓同名の他人の可能性がないといえるかが基準となります。
全国でみれば同姓同名の人がいるとしても、その地域内に限れば他にいないといいやすくなるでしょうし、勤務先や出身校などの情報も書き込まれていればさらに同定可能性は認められやすくなるでしょう。
特に企業の場合、他の地域に同一名称の企業があったとしても、当該地域にはこの名前の企業は一つしかないと主張できます。
(2) 風俗情報
爆サイは地域コミュニティの情報がよく書き込まれることに加え、水商売や風俗などのナイトワークに関するカテゴリーも豊富で、お店で働く女性に関する書き込みも目立ちします。
具体的な問題事例としては、以下のようなものがあげられます。
- 個人情報(本名、住所、電話番号)が流される
- 個人、お店の評判(外見、サービスなど)を貶めるような書き込みがある
- ストーカー被害
風俗でも特に同定可能性の有無が問題となります。
よくある名前を源氏名として使っていれば、同じ名前の人間は他にもたくさんいるため、名前だけでは区別がつきません。
爆サイでは地域ごとの細かい板の中で、店舗名、場合によっては源氏名ごとにスレッドが立てられていますから、スレッドタイトルや投稿前後の流れから、地域や店舗といった自分にかかわる属性を拾い上げ、悪口を言われている相手は自分だけを指していると主張しましょう。
そもそも源氏名に対する誹謗中傷に同定可能性が認められるかも注意が必要です。源氏名は本名ではありません。源氏名を中傷されても、本名での生活に悪影響が生じるとは限りません。
源氏名など本名以外の名前に同定可能性が認められるには、あなた自身と源氏名などを結びつけるような、現実との関わりが必要になります。
顔写真が店に名前と一緒に表示されているなど、現実のあなた=源氏名だとはっきりわかる事情があれば、源氏名についても同定可能性が認められるでしょう。
4.まとめ
爆サイでの誹謗中傷は、狭い地域に話題が集中しやすいため、現実への悪影響がすぐに出てしまうおそれがあります。
夜の仕事に関する情報も来店しようとする客に見られ拡散されかねませんから、急いで対処しましょう。
削除フォームからの依頼では、投稿への対応が鈍くなりがちです。発信者情報開示請求をすべきか、投稿者を特定できる可能性はあるかを削除前に検討するためにも、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。