誹謗中傷をしてしまったら

インターネットへの投稿が日常化している現代では、誰もが誹謗中傷を受ける側のみならず、してしまう側にもなるリスクがあります。

インターネット上で誹謗中傷を書き込むと、匿名での書き込みであっても「あなたの住所氏名を開示せよと請求が来ているが、開示してよいか」とサイト管理者や通信会社から回答を迫られるかもしれません。
また、住所・氏名をつきとめられ、損害賠償請求の訴状が届くケースもあります。

誹謗中傷を投稿してしまった方は、どのような対処法をとるべきなのでしょうか。

1.自分で削除する

まずは、投稿が拡散されてしまう前に、法的措置を取られるリスクがありそうな投稿削除を試みましょう。

TwitterなどのSNSならば、個別の投稿ごとにご自身で「削除する」ことができるでしょう。

一方、掲示板などではご自身で削除できず、サイト管理者などに削除依頼をすることになるかもしれません。
削除依頼をすることに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら、誹謗中傷に該当する投稿の削除依頼を弁護士が本人に代わって行うことはできません。

ご自身で投稿を削除した、あるいは削除を依頼したとしても、証拠隠滅罪とはなりませんので、その点はご安心ください。

2.意見照会回答書を作成する

(1) 意見照会とは?

書き込みを放置していた場合、誹謗中傷をした相手が削除・発信者情報開示請求を行うと、その手続の途中で投稿者に対して意見照会が行われることがあります。

いわゆるプロバイダ責任制限法は、削除請求や発信者情報等開示請求を受けたサイト管理者・通信会社(プロバイダ)などに対して、投稿者に意見を尋ねる「意見照会手続」を定めています。

プロバイダからの意見照会に一定の期間内に回答しなければ、意見なしとみなされてしまいます。
発信者情報開示請求の場合は原則2週間、削除請求の場合は原則7日間です。

特に発信者情報開示請求を無視する(回答しない)と、住所・氏名が開示されるリスクが高くなってしまいます。
通信会社の判断次第では、ほとんど裁判で争うことなく個人情報が開示され、損害賠償請求につながります。

必ず、意見照会回答書に記入をして回答しましょう。

(2) 意見照会回答書の書き方

発信者情報開示請求の意見照会回答書が届いている段階では、裁判所の仮処分や訴訟などが目前に迫っているか、すでに始まっていることでしょう。

「発信者情報開示に同意しません。」(開示拒否)に丸を付けるだけでは不十分です。
裁判の資料となる可能性を念頭に、充実した反論をする必要があります。

出典:一般社団法人テレコムサービス協会HP
https://www.telesa.or.jp/wp-content/uploads/provider_hguideline_20210528_8thdraft.pdf

開示拒否をするときは、なぜ住所氏名を開示すべきでないのか(たとえば、投稿内容は真実であるから名誉毀損とならない、などといった法的理由)を具体的に記載し、さらに、できる限り証拠も付け加えます。

相手方が反社会的勢力であり、あなたの住居や職場に押しかけ危害を加える可能性があるなど、相手方には開示を受けるべき正当な理由がないといえる事情もあれば反論の一つになります。

(3) 意見照会回答書作成を弁護士に依頼する

意見照会回答書は、プロバイダが開示請求で争うための有力な資料となります。裁判で用いられるわけですから、高度な法的専門知識が必要です。
できれば、損害賠償の裁判が始まる前の意見照会回答書作成の段階で弁護士に相談・依頼することを検討しましょう。

諸事情の中から法的に意味ある事実を適切に拾い上げて記入しなければ、プロバイダ側にも裁判官にも伝わりません。
名誉毀損などの要件に沿って、法的な構成に従い事実を整理することも必要です。

もちろん、回答書に記載した事実には、信頼できる証拠をできうる限り添付すべきでしょう。

相談した弁護士に具体的事情を説明し、回答書を作成してもらいましょう。

先に説明しましたが、発信者情報開示請求における意見照会手続には2週間以内に回答するというタイムリミットがありますから、回答書到着後、できる限り早くに弁護士に相談することをご検討ください。

3.訴えられたらどうするべき?

意見照会回答書で弁明しても、裁判所の判決によりあなたの住所氏名の開示が認められれば、通信会社などのプロバイダから開示したとの通知が来ます。
その後の損害賠償請求は、まずは弁護士から任意の交渉として行われるかもしれませんが、最初から裁判となる可能性もあります。

主な論点は、権利侵害、慰謝料、そして調査費用の3つです。
これらについて適切に対処することにより、影響を抑えることができる可能性があります。

権利侵害

開示請求などで権利侵害が認められていても、損害賠償請求の裁判であらためて権利侵害(名誉権・プライバシー権など)の有無を争うことができます。

もう突き止められてしまったのだから仕方がないと諦めずに、一つ一つ事実を確認しなおして権利侵害に当たらないと主張していきましょう。

慰謝料の金額

権利侵害が認められてしまいそうならば、賠償金額を少しでも低くするよう争うことになります。慰謝料の相場は、個人レベルならば100万に届くことはまずありません。

似たようなケースについての裁判所の判決を見つけ出して、相手が主張する金額よりも低い金額になるよう、裁判所を説得します。

調査費用の金額

調査費用とは発信者情報開示請求にかかった弁護士費用のことです。

必ず調査費用の全額を負担しなければならないとは限りません。発見できなかった他の投稿者に対する調査費用も請求しようとしていないかなどをチェックしましょう。

相手が弁護士と契約したタイミングや、契約書・領収書であなたの投稿への調査費用であると明示されているか、またその金額がいくらかまで細かく確認するのがお勧めです。

4.まとめ

誹謗中傷をしてしまった結果、住所氏名が開示されてしまったとしても、損害賠償請求が否定される可能性は十分にあります。
また、相手が過大な金額を要求しているのであれば、適正な金額へと減額するよう争うべきです。

ネットの投稿に関しては裁判所の新しい判断が次々と下されているため、弁護士の専門的知識や判断の助けが、請求者との裁判で見通しを立てるために非常に重要となります。

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