誹謗中傷解決の流れ

インターネット上にありもしない事実やプライバシー侵害となる記載が放置されていると、日々誰かに投稿を見られるのではないかと不安になってしまいます。

そこで、まず検討するべきは削除請求です。書き込みを削除することで将来的な権利侵害を防ぐことができます。

削除しても書き込みが続くケースなどでは、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求で投稿者を特定し、損害賠償請求や刑事告訴することなども選択肢に入ります。

ここでは、インターネット上の誹謗中傷問題を解決するまでの流れについて解説します。

1.手続の流れ・期間

ネット上の誹謗中傷問題を解決するまでの基本的な流れは、以下の通りです。

  1. 投稿の特定
  2. サイト管理者などの調査
  3. 証拠の確保
  4. 削除請求
  5. 発信者情報開示請求
  6. 損害賠償請求・刑事告訴

これらの手続に必要な期間は、請求の方法や相手の対応、最終的な目的(損害賠償請求をするのか否かなど)により大きく異なります。

例えば、メールフォームからの連絡によりサイト管理者が任意で投稿を削除してくれるようなら、メール送信から約1日で削除請求が終わることもあります。
一方、裁判所を利用する仮処分で削除申請をする場合は2~3か月、サイト側の反論次第ではより長くなります。

発信者情報開示請求で投稿者の住所・氏名を特定するまでの期間の目安は以下の通りです。

  • 実名登録型サイト:半年弱
  • 匿名サイト:半年~9か月ほど

匿名サイト相手の場合、IPアドレス等開示仮処分→住所氏名等開示訴訟と2つの法的請求が必要となりやすく、それだけ時間がかかります。

住所氏名開示後の損害賠償請求は、通常の民事裁判手続と同じように1年ほどの期間を要することになるでしょう。

なお、発信者情報開示請求では「期間」よりも「期限」を意識するべきです。ログとも呼ばれる通信記録は、匿名サイトへの投稿者を特定するためにほぼ必須の情報ですが、ほとんどの接続プロバイダは通信記録を3か月~1年以内に消去してしまいます。

その前に、サイト管理者から接続プロバイダに関する情報を引き出せるよう、迅速に動く必要があるのです。

2.手続の具体的なやり方

(1) 投稿の特定、サイト管理者などの調査

まずは、投稿を特定する必要があります。「http~」から始まる文字列、「URL」はほぼ必須となる情報です。
誹謗中傷の事実を人伝などで知った場合でも、この情報は特定するようにしましょう。

そして、URL等を手掛かりに投稿があるサイト(またはそのサイト情報を記録しているサーバー)の管理者を調査します。

(2) 証拠の確保、削除請求、開示請求

特定した投稿を保存し証拠を確保したら、方針に応じて削除請求や発信者情報請求の手続に移ります。

①削除請求

削除請求をする際には、まずサイトの削除フォームを確認してみましょう。任意での削除に応じてくれることがあります。
あるいは、送信防止措置依頼書を送付して削除請求することも考えられます。

もっとも、任意の請求でもできれば弁護士に相談してからの方がよいでしょう。
投稿を削除してしまうと、発信者情報開示請求に必要な証拠が消えてしまいます。事前に開示請求をすべきか弁護士と検討する必要があります。

任意の削除をしてもらえそうにない場合は、裁判所の手続(仮処分)を踏むことになるでしょう。

なお、削除請求をすると誹謗中傷を増やすような悪質な投稿者への対策としては、「検索結果」の削除請求も考えられますが、これも専門的な判断が重要となります。

[参考記事] 書き込みの削除
【削除できる投稿は違法な部分のみ】
不適切な投稿であっても、権利を侵害する違法なものでなければ裁判所は削除を認めません。裁判所は、投稿がされたサイト全体を削除することもなかなか認めてくれません。掲示板やSNSならば投稿ごと、ブログならば段落ごとの削除を想定して、どの部分を削除したいのか検討してください。

②発信者情報開示請求

いわゆる「プロバイダ責任制限法」4条1項は、被害者がサイト管理者や接続プロバイダに対して、投稿者を特定するための情報を開示するよう求める権利を認めています。これが「発信者情報開示請求権」です。

具体的な手続はケースにより細かく異なりますが、一般的には、

  1. サイト管理者に対するIPアドレス・投稿時刻の開示請求
  2. 接続プロバイダに対する住所氏名などの開示請求

と、2段階に分けて請求します。

IPアドレスとは、インターネットに接続されている通信機器に割り振られる番号です。接続時刻や接続先情報と合わせることで、投稿がされた通信契約に関する情報を持っている接続プロバイダ(たとえばNTTやドコモなど)に、投稿者の情報を照会できるようになります。

しかし、ネットカフェ、ホテル、大学などから投稿されたケースでは、投稿が行われた施設までは特定できても、誰が投稿したかまでは突き止められないことがあります。

[参考記事] 投稿者の特定

(3) 損害賠償請求・刑事告訴

特定した投稿者に対して、損害賠償請求・謝罪・再発防止の要求などをします。

案件にもよりますが、裁判所における損害賠償金の相場(慰謝料を含める)は、弁護士費用なども含めて最大100万円ほどでしょう。

[参考記事] 損害賠償の請求

なお、名誉毀損・権利の侵害など犯罪行為にも該当するケースでは、警察に対して刑事告訴することも考えられます。
発信者情報開示請求などで投稿者に関する情報を手に入れておくと、警察に迅速な捜査を促しやすくなります。

[参考記事] 刑事告訴

 3.弁護士費用・必要書類について

誹謗中傷対策は、複数の手続が積み重なっていくことが多く、どの手続をどこまで進めるかにより弁護士費用が異なります。
依頼する弁護士に対して、いくら払うことで何をしてくれるのかを、相談の際にしっかりと確認しましょう。

当事務所の費用について

なお、損害賠償請求では、慰謝料に加えて発信者情報開示請求にかかった弁護士費用の一部を投稿者に請求できることがあります。
領収書の記載も、何にいくら支払ったのかをできる限り明確にするよう注意してください。

なお、弁護士費用とは別に供託金が必要となることもあります。供託金とは、仮処分をする際に裁判所に一時的に預けるお金のことです。目安としては10万円~30万円ほどでしょう。

必要書類に関しては、本人確認書類として免許証や健康保険証のコピー、さらに印鑑登録証明書や住民票の写しなどが必要なケースがあります。
具体的には弁護士にご確認ください。

【対策業者による非弁行為に要注意】
「インターネット上の誹謗中傷の書き込みを削除します」という業者を見かけることもあるかもしれません。
しかし、法律上、弁護士でない者が報酬を得る目的で削除代行業務などの法律行為を行うことは「非弁行為」となり違法です(弁護士法第72条)。「依頼人になりすましてサイト管理人と交渉する」「依頼人の名前を使って削除申請フォームからメールを送る」などはもちろん、弁護士資格のないものが報酬を得て代理人となり、サイト管理者と記事の削除を求めて示談交渉をすることは、法律業務にあたり違法です。
また、ネット誹謗中傷対策業者が「弁護士と提携している」などと言って、依頼者から報酬を受け取った上で仲介したり、弁護士を紹介したりする行為も非弁行為となり違法です。送信防止措置依頼書の作成を代理してもらうことも違法となる可能性があります。

4.インターネットでの誹謗中傷への対応は弁護士へ

インターネットでの誹謗中傷は、黙ってやり過ごそうとしても被害は拡大し続け、一度収束したとしてもまたいつ蒸し返されるかわかりません。

炎上のリスクを回避した上で記事や投稿・検索結果を削除する、投稿者を見つけ出し損害賠償や再発防止を要求するなど、様々な対策が考えられます。

被害者が自分でできる手段もありますが、裁判所を利用するとなると、迅速かつ専門的な対応が求められます。
誹謗中傷が書き込まれたら、すぐに弁護士へご相談ください。

19 23
【電話受付】平日9:30〜21:00 / 土日祝9:30〜18:30