「ホストラブ」で誹謗中傷されたら|削除請求・損害賠償請求
ホストクラブ・キャバクラ・性風俗店などに特化した情報サイトの「ホストラブ(ホスラブ)」には、匿名掲示板が設置されており、店舗やキャストに対する口コミなどを誰でも投稿できるようになっています。
「ホストラブ」の匿名掲示板には、日々様々な口コミが投稿されていますが、中には誹謗中傷に当たるものも含まれています。
誹謗中傷の投稿に対しては、投稿削除や損害賠償の請求を行って対抗しましょう。
今回は、「ホストラブ」で誹謗中傷被害を受けた店舗・キャストの方が、権利回復のためにとり得る法的な対抗手段について解説します。
1.「ホストラブ(ホスラブ)」とは?
「ホストラブ」は、ホストクラブ・キャバクラ・性風俗店など、いわゆる「夜のお店」に特化した匿名掲示板サイトです。
「ホスラブ」などと略して呼ばれることもあります。
ホストラブには、店舗ごとにスレッドが立てられ、そのスレッドに店舗やキャストに関する口コミが投稿されています。
ホストクラブ・キャバクラ・性風俗店などの利用を検討している人の中には、ホストラブに書き込まれた口コミの内容を参考にして、訪問する店舗や指名するキャストを選んでいる人も多いです。
そのため、ホストラブにおける投稿内容は、各店舗の売上・収益を大きく左右する可能性があります。
ホストクラブ・キャバクラ・性風俗店などは、通常の飲食店などとは異なり、客側がキャストを指名できる方式になっている点が大きな特徴です。
「店舗が気に入ったから」という理由で通う人もいますが、そうではなく「キャストが気に入ったから」という理由で、これらの店舗に通う人も非常に多くなっています。
そのため、ホストラブに投稿されるキャストに対する口コミは、店舗に対するものと同じかそれ以上に重要な意味を持っています。
中には、「冷たく対応されたから」「想像していたよりも容姿が好みではなかったから」などの理由で、キャスト個人に対する誹謗中傷の投稿を行うユーザーも少なくありません。
キャストへの個人攻撃が多数投稿されている点は、ホストラブの負の側面と言えるでしょう。
2.「ホストラブ」の書き込みを削除する方法
ホストラブの匿名掲示板における誹謗中傷の投稿を削除する方法は様々です。
基本的には、以下に挙げる順で段階的に対応するのが一般的ですが、投稿の削除を急ぐ場合には、早期に仮処分申立て等の法的手段を講じることもご検討ください。
(1) 削除依頼フォームから削除申請を行う
ホストラブでは、誹謗中傷などの投稿を報告できる「削除依頼フォーム」を設置しています。
参考:削除依頼フォーム|ホストラブ関東版
削除依頼フォームに所定の事項を入力して送信すると、ホストラブの運営会社に連絡が届きます。
その後、運営会社の「削除人」が、投稿を削除すべき正当な理由があるかどうかを確認して、投稿削除の要否を判断します。
削除依頼フォームに入力すべき事項は、以下のとおりです。
①スレッド番号
各スレッドを指すURLの14桁の数字です。②レス番号
スレッド上の投稿に付された番号です。③削除理由
投稿を削除すべきと考える正当な理由・法的根拠を記載する必要があります。
なお、ホストラブでは「削除依頼ガイドライン」を設けており、ガイドラインの規定内容に沿った理由を記載すると、投稿の削除が行われやすいと考えられます。
参考:削除依頼ガイドライン|ホストラブ④名前
名前の記載は必須ではありませんが、店舗名や源氏名等を明記して削除依頼を行い、どのような被害が具体的に発生しているのかを明らかにした方が、投稿の削除は認められやすくなるでしょう。⑤メールアドレス
メールアドレスの記載は必須ではありませんが、ホストラブの運営会社からの返信を受けられるようにするため、記載しておいた方がよいでしょう。
なお、ホストラブに対する削除依頼の内容は、「削除依頼履歴」にて公開されます。公開されるのはスレッド番号・レス番号・削除理由の3点で、名前やメールアドレスは公開されないのでご安心ください。
参考:削除依頼履歴|ホストラブ
(2) 運営会社に「送信防止措置依頼書」を送付する
削除依頼フォームを通じて削除依頼を行うよりも、ホストラブの運営会社に対して「送信防止措置依頼書」を送付した方が、投稿の削除が実現する可能性が高まると考えられます。
送信防止措置依頼書を送付することで、受領日以降は運営会社が誹謗中傷投稿の存在・内容を知っていたことになり、被害者に対する損害賠償責任を負う可能性があるからです(民法709条、プロバイダ責任制限法3条1項)。
送信防止措置依頼書の書式は、法務省ウェブサイトなどに掲載されており、自由にダウンロードできます。
参考:侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書|法務省
ただし、ホストラブの運営会社は公表されていないため、何らかの手段を用いて運営会社を特定する必要があります。
誹謗中傷投稿の削除請求に習熟した弁護士であれば、ホストラブの運営会社に関する情報や特定のノウハウを持っていることが多いので、まずは一度弁護士にご相談ください。
(3) 弁護士を通じて投稿の削除を依頼する
ご自身でホストラブの運営会社に対して直接削除依頼を行っても、運営会社側の反応が芳しくない場合は、弁護士を通じて投稿の削除を依頼することも考えられます。
弁護士の名前で削除依頼を行うことで、ホストラブの運営会社は、被害者側が法的手続を含めた本格的な対応に着手していることを認識するでしょう。
その結果、面倒な法的手続きへの対応を避けるために、誹謗中傷投稿の削除に応じる可能性が高くなります。
(4) 裁判所に投稿削除の仮処分を申し立てる
交渉による削除依頼が奏功しなければ、最終的には裁判所に対して、投稿削除の仮処分を申し立てることになります。
誹謗中傷の投稿により、被害者に著しい損害または急迫の危険が生じるおそれがあると裁判所に認められれば、ホストラブの運営会社に対して投稿削除の仮処分命令が発せられます(民事保全法23条2項)。
仮処分申立てには、必要書類の準備から裁判手続への対応まで、多大な労力を要します。
ホストラブでの誹謗中傷投稿について、仮処分による削除請求を行う場合には、事前に弁護士へご相談ください。
3.「ホストラブ」の匿名投稿者の法的責任を追及するには
ホストラブへの投稿は匿名で行われますが、投稿者が匿名であっても、誹謗中傷に関する法的責任を追及することは可能です。
ホストラブの匿名投稿者の法的責任を追及する方法としては、損害賠償請求と刑事告訴が考えられます。
匿名投稿者に対する損害賠償請求や刑事告訴を行うためには、あらかじめ投稿者が誰であるかを特定することが必要です。
ホストラブの匿名投稿者を特定するには、「発信者情報開示請求」を行う方法が一般的です(プロバイダ責任制限法4条1項)。
発信者情報開示請求とは、インターネット上に流通している情報によって被害を受けた者が、損害賠償請求を行う前提として、加害者(投稿者)に関する情報の開示を求めることを言います。
ホストラブの匿名投稿者を特定するために行う発信者情報開示請求の大まかな流れは、以下のとおりです。
- ホストラブの運営会社に対して発信者情報開示請求を行い、投稿に用いられた端末のIPアドレスを取得する
- IPアドレスからインターネット接続業者を確認する
- インターネット接続業者に対して発信者情報開示請求を行い、回線契約者の個人情報を取得する
※フリーWi-Fiに接続した状態で投稿が行われた場合や、投稿者の所有でない端末を用いて投稿が行われた場合などには、発信者情報開示請求のみによって投稿者を特定することはできない点に注意が必要です。
発信者情報開示請求等の詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。
[参考記事] ネットで誹謗中傷した犯人(投稿者)を特定できる?【「ホストラブ」での誹謗中傷で売上が減った店舗による損害賠償請求は可能?】
ホストラブへの誹謗中傷投稿によって発生する損害には、キャスト個人が受ける精神的損害(慰謝料)だけでなく、店舗の評判が毀損されることによる売上減少等も含まれます。
そのため、ホストラブ上での悪質な誹謗中傷投稿にお悩みの店舗経営者の方は、投稿者に対する損害賠償請求等を積極的にご検討ください。
弁護士にご依頼いただければ、迅速な被害回復に向けて最大限尽力いたします。
4.まとめ
ホストラブでの誹謗中傷投稿には、店舗に対するものにとどまらず、キャストへの個人攻撃に及ぶ悪質なものも含まれています。
もしホストラブ上で悪質な誹謗中傷を受けた場合には、投稿の削除・匿名投稿者の特定・損害賠償請求などを弁護士にご依頼いただくのがお勧めです。
弁護士にご依頼いただければ、迅速な投稿の削除を実現して、風評被害の拡大を防止することを目指します。
また、匿名をいいことに誹謗中傷を行う投稿者を決して許さず、匿名投稿者の特定および損害賠償請求を通じて、徹底的に法的責任を追及して参ります。
ホストラブでの誹謗中傷被害にお困りの店舗・キャストの方は、お早めに弁護士までご相談ください。