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改正プロ責法の新制度|発信者情報開示命令・提供命令・消去禁止命令

誹謗中傷の相手を特定する法律、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」が改正されました。
このコラムでは以下、「改正プロ責法」と略します。

改正プロ責法は、誹謗中傷を書き込んだ相手をより確実により早く特定できるよう、新しい制度を創設しています。

  • 発信者情報開示命令:開示請求を柔軟な手続にまとめた制度
  • 提供命令:情報をサイト管理者に出させる制度
  • 消去禁止命令:通信会社に通信記録(ログ)を消さないよう命令する制度

ここでは、改正プロ責法で新設された上記3つの制度について、わかりやすく説明します。

1.発信者情報開示命令

これまで利用されてきた裁判や仮処分に加えて、新たな開示手続として発信者情報開示命令が定められました。

匿名サイトへの投稿者の住所氏名を明らかにするには、原則として多くの処理が必要です。

  1. サイト管理者へのIPアドレス開示請求
  2. 通信会社の調査
  3. 通信会社へのIPアドレス提供
  4. ログの保存
  5. 通信会社への住所氏名開示請求 など

改正前は、上記の処理を様々な方法でバラバラに行っていました。制度上、関係者の情報共有・連携が組み込まれていなかったのです。
違う裁判所に申立て・訴訟提起することもあり、弁護士に支払う交通費や日当など雑費も増えてしまいます

なにより、通信会社はログを一定期間、会社によっては最短わずか3ヵ月で自動消去してしまいます。
弁護士が最善を尽くしても処理がスムーズにいかず、ログ保存依頼が間に合わずに誹謗中傷を書き込んだ犯人が分からなくなってしまうケースが後を絶たなくなっていたのです。

新たな発信者情報開示命令では、開示までに必要となる処理をひとまとめにし、柔軟な運用が見込める非訟事件で審理が行われます。

サイト管理者に対しては、IPアドレスだけでなく電話番号やメールアドレスも開示請求でき、通信会社へ住所氏名を開示するよう求める際にも用いることができます。

後述する提供命令や消去禁止命令により、上記2〜4の処理も裁判所での手続に組み込まれています。

(1) IPアドレスの開示命令

IPアドレスは、インターネットにつながっているスマホやパソコン、サーバーなど電子機器の住所のようなものです。
匿名サイトへの開示請求では、基本的にIPアドレスなど投稿に関する電子データを手掛かりに、投稿者を逆探知していきます。

改正前は、「仮処分」がIPアドレス開示請求の基本手段でした。
仮処分は裁判よりも簡略化された手続でしたが、書類送付に手間がかかるおそれがあり、担保金を裁判所に供託しなければならない負担もありました。

発信者情報開示命令で開示手続を行う場合、まず、サイト管理者に対してIPアドレスやタイムスタンプなど、投稿に関する電子データを開示するよう命令してほしいと裁判所に申し立てます。

ポイントは提供命令です。提供命令が認められれば、IPアドレスが開示される前に通信会社の住所・名称が分かります。すぐに通信会社への住所開示命令を申し立てられるのです。

住所開示命令も、このIPアドレス開示命令の手続に連携していますので、手続のスピードアップと負担軽減につながります。

(2) 住所氏名の開示命令

通信会社を相手として、住所氏名の開示命令を申し立てます。

IPアドレスを分析することで投稿者が契約している通信会社が分かります。
その通信会社にIPアドレスなどを渡せば、IPアドレスを通信記録、いわゆる「ログ」と照合して投稿者の住所氏名が分かるのです。

住所氏名の開示請求は、改正前は通常の裁判しか利用できませんでした。
仮処分が使えないだけでなく、IPアドレス開示請求と切り離されていたため、裁判所も別々になり手間がかかることもありました。

改正プロ責法は、住所氏名の開示請求にも発信者情報開示命令を使えるようにしています。
開示請求、ひいては損害賠償までの期間を短縮できますし、10条7項により申立先の裁判所も、サイト管理者へのIPアドレス開示請求と同じです。

提供命令はここでも役に立ちます。提供命令を受けたサイト管理者は通信会社にIPアドレスなどを渡します。

(3) 電話番号やメールアドレスの開示命令

匿名サイトであっても、投稿者のメールアドレスや電話番号が分かることもあります。

SNSなどログインしてから利用するタイプのサイト(アカウント型サイト)では、いわゆる2段階認証のために、アカウントに登録されているメールアドレスや電話番号をサイトが保有していることがあるからです。

この場合、①SNSサイト管理者への電話番号・メールアドレス開示命令、②電話会社への住所氏名の照会をします。

改正前は、電話番号やメールアドレスを開示するには1年以上裁判をする必要がありました。
アカウント型サイトはTwitterやGoogleなどアメリカに本社があるため、裁判をするとなると海外に書類を送付するなど手間がかかったからです(なお、2022年に海外法人も日本に登記をしたので事務的な手間は減り、この期間は短縮されています)。

発信者情報開示命令は、仮処分と異なり、2段階認証用のメールアドレスや電話番号も対象としています。
海外法人の日本登記後も、裁判をせずにSNSや検索サイトのクチコミなどの誹謗中傷へ迅速に発信者情報開示請求できるメリットは大きいでしょう。

なお、②の電話会社への照会は、弁護士会を通じた23条照会や裁判所を通じた調査嘱託など、他の手続を用います。裁判でも発信者情報開示命令でも、これは変わらないと思われます。

2.提供命令

提供命令は、開示までに必要となる処理をひとまとめにするうえで最も重要な制度です。

サイト管理者に、投稿に利用された通信会社・IPアドレスなどのデータを提供するよう、裁判所が命令します。

(1) 被害者へ通信会社の住所名称を提供

誹謗中傷がどの通信会社の回線を通じて書き込まれたのか、これまでは被害者側がIPアドレスを解析して調査していました。
しかし、インターネットの爆発的な発展に伴い情報通信技術も複雑化し、内部の運用がよくわからないままでは調査の負担も無視できなくなってきていたのです。

そこで、サイト管理者に通信会社の住所・名称を被害者に教えるよう命令することにした制度が、提供命令です。
サイト管理者は、投稿データを保有しているだけでなく、技術・知識もありますからIPアドレス解析も得意でしょう。

提供命令は、発信者情報開示命令自体よりも前に決定が出ます。
つまり、IPアドレスが開示されるよりも前に次の請求先である通信会社が分かるため、処理手順をショートカットできます。

(2) 通信会社へIPアドレスなどを提供

サイト管理者から通信会社へ、投稿者の住所氏名を特定するために必要なIPアドレスやタイムスタンプといった投稿データを提供するよう命令してもらえます。

タイミングとしては、通信会社に住所氏名を開示するよう発信者情報開示命令を申し立てた後になります。
「あの通信会社に住所氏名開示請求をした」とサイト管理者に通知することが条件です。

改正前は、被害者側が裁判手続外で開示されたIPアドレスを通信会社に教えていました。
ところが、情報が不十分でログ解析ができないと言われ、サイト管理者に連絡して追加情報を求めるケースが生じていたのです。

提供命令によりサイト管理者が保有する情報は全て、サイト管理者から通信会社へ直接わたります。
連絡の手間やトラブルを回避し、IPアドレス開示請求から住所氏名開示請求へとスムーズな連携が可能となるでしょう。

3.消去禁止命令

ログは投稿者特定に不可欠であると同時に、保存期間が短いために開示請求失敗のリスク要因でもありました。

判明した通信会社にIPアドレスなどを渡してログを保存したままにするよう依頼することで、保存期間が過ぎても開示手続を続けられます。

しかし、改正前は任意の協力を要請していたことがほとんどで、通信会社の中には仮処分をしなければログを保存してくれないところもありました

発信者情報開示命令を申し立てているときは、通信会社にログを消去しないよう裁判所に命令してもらえます。それが消去禁止命令です。

提供命令と並んで、発信者情報開示命令に付随して手続をまとめあげ、より確実に投稿者をつきとめられるようサポートする役割を果たします。

4.まとめ

改正されたプロバイダ責任制限法は、発信者情報開示命令による手続の迅速化と負担の軽減により、開示請求が成功しやすくなるよう最大限の配慮を見せています。
提供命令・消去禁止命令により、以前はバラバラだった手続もできる限り1つの裁判所・11つの手続にまとめられるようになりました。

もっとも、「開示請求そのもの」が簡単になったわけではありません。
特に、ログ保存期間自体は通信会社の運用の問題であり、今回の法改正で解消も緩和もされていません。開示命令を用いても、発信者情報開示請求には失敗するリスクが付きまとっているのです。

また、発信者情報開示命令はあくまで開示請求のための手続です。削除するならば別に仮処分が必要ですし、損害賠償請求は示談交渉や裁判となります。
弁護士のアドバイスをもとに適切な方針を検討しましょう。

インターネット上で誹謗中傷の被害を受けた方は、お早めに弁護士へご相談ください。

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