5ちゃんねるの誹謗中傷|書き込み削除・特定・開示請求方法
5ちゃんねるで誹謗中傷被害にあった場合、できるだけ早く書き込みを削除するための対応を取るべきです。
また、投稿者に損害賠償請求をしたいという場合は、投稿者を特定するための訴訟手続が必要になるケースもあることから、弁護士によるサポートが必要です。
今回は、5ちゃんねるのネット誹謗中傷の対応策についてご説明します。
1.5ちゃんねるとは|よくある被害事例の特徴
まずは、5ちゃんねるの基本的な内容と、被害事例の特徴についてご説明します。
(1) 5ちゃんねるとは?
5ちゃんねるは、当初「2ちゃんねる」という名前で開設された掲示板サイトです。2ちゃんねるの運営者の内部紛争を経て、名称が「5ちゃんねる」となりました。
2ちゃんねるの創始者である西村博之氏は、別途「2ちゃんねる.sc」を創設しています。現在の5ちゃんねるの管理者は、フィリピン法人である「ロキ テクノロジー」となっています。
しかし、現在の5ちゃんねると2ちゃんねる.scが全くの無関係とはいえません。管理者は異なるものの、掲示板の配置はほとんど同じであり、匿名掲示板であることも同様です。
また5ちゃんねるへ書き込まれた内容は、2ちゃんねる.scに転送されます。したがって、5ちゃんねると2ちゃんねる.scには原則として同じ内容が記載されているのです。
(2) 被害事例の特徴
2ちゃんねる時代から、5ちゃんねるは誹謗中傷などの事例が後を絶ちません。
5ちゃんねるの掲示板では不特定多数の人が匿名で書き込むことが可能です。その匿名性を利用して、悪口や誹謗中傷を書き込んでしまう人がいます。
誹謗中傷は、名誉権の侵害に当たるようなものや、プライバシーを侵害するような書き込み、犯罪になり得るものまで様々です。
また、大きな事件が発生する前に犯人が5ちゃんねるに書き込みを行なった事例もありました。殺害予告などが行われることもあり、警察に通報されるケースもあります。
根拠もない陰謀論が展開されることもあります。最近では新型コロナウィルスに関連するデマが流れることもありました。
個人的な妄想を書き込む人もいるので、内容の真偽の判断には慎重になる必要があります。
2.5ちゃんねるの削除請求方法・注意点
次に、5ちゃんねるで誹謗中傷などの権利侵害が行われた場合にできる削除請求の方法と、その際の注意点についてご説明します。
(1) メールによる削除請求
5ちゃんねるを運営する法人はフィリピンにあります。
フィリピンは「送達条約」に加盟していないことから、掲示板の投稿に関しての削除請求を裁判所の仮処分で行う場合、相手方を呼び出すための送達に5〜8ヶ月ほどかかってしまいます。
そこで、まずは任意での削除依頼を検討する方が得策です。
5ちゃんねるには、メールによる削除依頼、通報という形の一般の削除要請、削除整理版での削除要請の3つの方法があります。
このうち、通報という形の一般の削除要請と削除整理版での削除要請は、削除依頼の理由が公開されてしまいます。
これを避けるためにも、メールによる削除依頼がおすすめです。
メールによる削除依頼の流れは以下の通りです。
- 件名に「削除申立て」と記入
- メールに必要事項を記入する
- 削除理由を記入する
- meiyokison@5ch.net にメールを送信する
必要事項の内容としては「該当するURL、レス番号」を記入します。また、(あれば)削除理由を根拠付ける資料と、本人確認のための資料を添付します。本人確認の資料は運転免許証などです。
また、書き込みの内容がガイドラインに反することを「削除理由」として記載します。どのような内容がどのガイドライン違反になるのかを詳しく書くことが大切です。
送付する本人確認資料や削除理由に不安がある場合は、弁護士に相談してから行うことをおすすめします。
参考:5ちゃんねる削除体制
(2) 削除依頼をする際のポイント
メールによる削除請求を行なった場合でも、必ず削除される保証はありません。
削除依頼で記載する理由は非常に重要です。
例えば、「内容が不快である」などの理由では削除されることはありません。ガイドラインに沿って、内容が不適切であることを指摘なければいけません。
削除判断基準では、以下の4点が記載されています。
- 名誉権侵害:個人ないし法人の社会的評価を低下させる事実を摘示する場合
- プライバシー侵害:人の名前(イニシャル等も含む)、住所、家族の名前、電話番号等の組み合わせで、個人のプライバシーを侵害していると判断できる
- 平穏に関する利益の侵害:他人に危害を加えることを予告するもの。悪質な殺人予告など
- 社会に害悪が生じる現実的危険性がある情報:爆弾製造、薬物販売など
ご自身のケースがこれらのどれに当たるのかを検討した上で、削除理由に記載することをおすすめします。
さらに詳しいガイドラインについては以下にて確認できます。
参考:削除ガイドライン
削除ガイドラインはかなり細かい部分まで記載されていることから、すべて把握するのが難しいこともあるでしょう。
メールを書くときに不安がある場合は、弁護士に相談した上で削除依頼のメールを送ることも視野に入れておきましょう。
3.投稿者を特定する方法|発信者情報開示請求
投稿の削除だけでなく、相手に損害賠償請求などをしたい場合は、通信記録が消える前に投稿者を特定する必要があります。
次に、発信者情報開示請求の手続についてご説明します。
(1) 発信者情報開示請求にて投稿者の特定が可能
5ちゃんねるの掲示板に誹謗中傷などの悪質な書き込みが行われたら、発信者情報開示請求を利用して、投稿者を特定することが可能です。
まずは5ちゃんねるの運営者に対し、IPアドレスやタイムスタンプなどの情報開示を請求します。これによってどこのプロバイダを経由して投稿されたかを確認することができます。
次に、プロバイダに対し契約者情報の開示請求を行います。
任意でも請求することはできますが、応じてくれることはほぼありません。そのため、訴訟手続によって請求するのが一般的です。
また、通信記録の保存期間は3ヶ月程度のため、削除の時期が近づいている場合には発信者情報消去禁止の仮処分も一緒に申し立てます。
現在ではこの2ステップを踏んだ上で、投稿者を突き止めることになります。
[参考記事] ネットで誹謗中傷した犯人(投稿者)を特定できる?もっとも、プロバイダ責任制限法が改正され、2022年度中には1つの開示請求で管理者とプロバイダの両者から情報を得ることができるようになるでしょう。
手続に要する時間が短縮できることから、今後は投稿者の特定までの期間を大幅に削減できるようになります。
(2) 通信記録が消える前に開示をしてもらうには
手続が簡略化すれば、通信記録が消去される心配も少なくなります。
もっとも、現状では時間がかかってしまうことから、通信記録が消えてしまう前に開示を受けられるように、5ちゃんねるの運営者の呼出しを行わない無審尋手続が行われています。
この手続を取る場合、供託金が通常の10万円よりも多い30万円となりますが、手続が終わればお金は戻ってきます。
また、開示を命じる決定書のフィリピンへの送達を遅らせることにより、簡易取戻し制度(民事保全規則17条)を利用することができます。
これを利用することによるメリットは、取戻しまでの期間を短くすることができる点にあります。
運営者に送達が行われると簡易取戻し制度が使えないことから、担保取消申立てが必要となります。この場合は権利行使催告というものを行うため、再度フィリピンの運営者への送達が必要となります。
簡易取戻し制度を利用すれば、この送達は必要なくなります。
4.迅速な削除・犯人特定を望むなら弁護士に相談を
5ちゃんねるの書き込みに対し、ご自身で削除依頼のメールを送ること自体は可能です。
しかし、必ず対応してもらえるとは限りません。対応してもらえなかった場合には、早急に専門家である弁護士に相談すべきです。
また犯人特定、損害賠償請求までご検討の方は、訴訟手続が必要になることから、削除前の段階で弁護士に相談・依頼することをおすすめします。