インスタグラムへの削除・発信者情報開示請求
インスタグラム(Instagram)は写真・画像に特化したSNSです。ハッシュタグやトレンド機能などによる共有・拡散に優れているだけでなく、運営者がフェイスブックと連携することで投稿数や閲覧数を伸ばし、世界最大級のSNSへと成長しています。
もっとも、フェイスブックと異なり匿名登録が可能なこともあって、誹謗中傷コメントなどによる権利侵害が後を絶ちません。
特に、なりすましによる被害が顕著で、迅速な対策が必要です。
ここでは、インスタグラムでトラブルが生じた際の、投稿コメントの削除請求や発信者情報開示請求について説明します。
なお、実際に請求をするにあたっては、弁護士に各サイトの近況をご確認ください。突然サイト側の対応や裁判所の運用が変わってしまうことがあるからです。
また、2022年10月1日から施行された改正プロバイダ責任制限法により、今後各サイトへの適切な対処方法が変わってくる可能性もあります。
1.インスタグラムの削除請求
自分の投稿へのコメントは自由に削除できます。
一方、他人の投稿やそこでのコメントで誹謗中傷が行われた場合には、まずはサイトを通じた規約違反報告を行います。
インスタグラム運営側が報告に応じて削除しないのであれば、裁判所を用いた削除請求を検討します。
(1) 規約違反の報告
インスタグラムのヘルプセンター「利用規約」のうち、投稿やコメントによる権利侵害にかかわる規約違反行為としては、 以下が挙げられています。
- 他人へのなりすましや不正確な情報の提供
- 不正な、誤解を招くおそれのある、または詐欺的な行為を行うことや、違法または不正な目的で何らかの行為を行うこと
- 他者の個人情報や秘密情報を許可なく投稿したり、知的財産権などの他者の権利を侵害したりする行為(著作権侵害、商標侵害、偽造、海賊品など)
同「コミュニティガイドライン」では、「明らかな脅迫やヘイトスピーチ、個人の誹謗や名誉毀損を意図したコンテンツ、脅迫や嫌がらせとして公開した個人情報、繰り返し発信される好ましくないメッセージ」とより削除対象が具体化されています。
頻発しているなりすましアカウントに対しても対応は早く、アカウントの削除申請を行えば対応されることは多いようです。
(2) 法的な削除請求
インスタグラムを運営する米国法人「Meta」社(元フェイスブック)を相手に、自分の住所を管轄する裁判所に仮処分を申し立てます。
仮処分は、通常の裁判では時間がかかりすぎて権利救済に間に合わないときに認められる仮の手続です。
もっとも、裁判所による強制力は伴いますので、裁判所が仮処分の決定を認めればサイト側は投稿を削除します。
日本支社ではなくアメリカ本社が管理権を持つため、アメリカへ書類をEMS(国際スピード郵便)で送付する必要があり、手続開始まで1ヶ月ほどかかってしまいますが、その後は通常の裁判よりも迅速に手続が進みます。
2.発信者情報開示請求
「削除を繰り返しても誹謗中傷が止まらない、なりすましを止めない」「あまりにひどい書き込みなので損害賠償請求したい」
そのようなときは、相手の特定をするために発信者情報開示命令を検討します。
(1) 発信者情報開示命令の基本ルート
インスタグラムのような匿名ネットサービスでは、サイト運営者は住所氏名を把握していません。
しかし、インターネットに接続するためには通信会社(接続プロバイダ)と契約しなければなりませんし、サイト運営者側も、いつどの接続プロバイダからアクセスされたかに関する情報を記録しています。
まずは、サイト運営者に対してアクセス情報の開示を求め、それを基に通信会社から住所氏名を引き出すことになります。
以前までは、サイト運営者に対しては仮処分でアクセス情報の開示を求め、そして住所氏名など個人情報を持つ通信会社に対しては正式な裁判で請求をしていました。
しかし、改正されたプロバイダ責任制限法が2022年10月1日に施行され、請求すべき通信会社の名称や住所、IPアドレスなどをサイト管理者等の負担で調査させることが可能となりました。
(2) IPアドレスの開示
発信者情報開示命令は、インスタグラムを運営するアメリカのMeta社に対して申し立てます。
海外法人を相手とするため、東京地方裁判所にしか申し立てられないことにご注意ください。
インスタグラムの内部記録はアカウントに紐づいているため、申立てでは開示を求めたいユーザーアカウントを指定します。
対象のアカウントが消去されても開示請求できるよう、お早めに印刷やpdfなどで相手のアカウント名と投稿・コメント内容を保存しておいてください。
当該アカウントからの通信に関する情報の中でも最も重要な情報がIPアドレスです。
IPアドレスとは、スマホやパソコンなどがインターネットに接続する際に割り当てられる番号のことです。
インスタグラムの場合、開示されるIPアドレスは投稿時のものではなくログイン・ログアウトの際のものですが、改正プロバイダ責任制限法では、ログイン時IPアドレスなどによる開示請求を認めています。
(改正前までは、開示されたログイン時IPアドレスの中に投稿直前のものがなければ、裁判所が発信者情報開示請求を認めないおそれがありました。)
3.まとめ
インスタグラムは近年に一気に人気に火が付き、利用者が急増しています。
それに伴いトラブルも多くなり、フェイスブックとの連携機能もあって被害が拡大しやすい傾向があります。
削除請求はサイトからの報告でも対応されやすいようですが、発信者情報開示請求は専門性が高く弁護士の活用が欠かせません。
アカウント削除のあと、すぐにインスタグラム内部のデータは消去されてしまうようですので、もし発信者情報開示請求をご検討されているのであれば、お早めに弁護士にご相談ください。