風俗で働いていて誹謗中傷されたらどうすればいい?
インターネットの風俗系サイトや掲示板などでは、風俗で働いている方への誹謗中傷の被害が深刻となっています。
「周囲の人には水商売を隠しているために怒りや不安を打ち明けられず、精神的に大きな負担になっている」という方も多いでしょう。
誹謗中傷に対しては、積極的に対応を取っていくことが大切です。
ここでは、風俗で働いている方が誹謗中傷の被害にあった際に取るべき対応について弁護士が解説します。
1.投稿を削除する
インターネット上に誹謗中傷が残り続ける限り、権利が侵害されている状態が続いてしまいます。
悪口や罵詈雑言が書き込まれたままでは、それを目にする客からの評判は下がり続けます。
身バレ投稿がされたタイミングで身近な人にGoogleやYahoo!などで実名を検索されてしまえば、周囲に風俗で働いているとバレてしまうでしょう。
本当に名誉やプライバシーが傷つけられたかにかかわらず、投稿がインターネットに存在する以上、いつどれだけ実害が生じるかわからない精神的負担は消えません。
その不安を解消するためには、投稿を削除することを考えましょう。
風俗系サイトは被害者自身からの削除依頼にも対応してくれる傾向があります。
もっとも、投稿者を特定したいときは通信データを温存する必要があります。
自分で削除請求する前に弁護士に相談しましょう。
2.投稿者を特定する
投稿内容があまりに悪質なケースや、粘着質に何度も繰り返されているケースでは、削除だけでは対応しきれません。
誹謗中傷を根本的に解決するには、投稿者を特定した上での賠償請求が効果的です。
このために、いわゆるプロバイダ責任制限法に定められた発信者情報開示命令を利用します。
風俗関連の情報を扱うサイトはほとんど匿名サイトでしょう。
匿名サイトは投稿者の個人情報を把握していませんから、IPアドレスなどの通信データを開示するよう命令します。そして、IPアドレスを解析して判明した通信会社に、投稿者の住所や氏名などを開示するよう求めるのです。
投稿者の特定において懸念すべきことは3つあります。
一つは、投稿削除に伴う通信データ削除により投稿者特定が失敗してしまうことです。
投稿者を特定したいときは、削除する前に弁護士にご相談ください。
二つめは、ログ保存期間切れです。
ログとは通信会社が保管している通信記録のことで、投稿者特定のために必須となる重要なデータです。
ところが、ログは一定期間が過ぎると消去されてしまいます。
その期間内に通信会社を特定しなければならないのですが、スマホ会社などのログ保存期間は投稿からわずか3か月しかありません。投稿に気付いたら出来るだけ早く開示命令を始めましょう。
三つめの失敗リスクとして、不特定多数が利用する施設が開示されてしまうケースがあります。
ネット喫茶や公衆Wi-Fi、ラブホテルなどの回線から投稿されていたとき、投稿者本人の個人情報はわからないままに終わってしまいます。
3.損害賠償などを請求する
特定できた投稿者に対しては、謝罪や再発防止を求められます。
さらに、慰謝料や開示にかかった調査費用も請求しましょう。
精神的損害を埋め合わせる慰謝料が、誹謗中傷への損害賠償金となります。
裁判所の相場では原則として100万円程度が上限と考えられるでしょう。
また、示談交渉で和解するとき、慰謝料の支払いの他に、多くの場合で「投稿した事実を認める」「謝罪する」「二度と誹謗中傷を投稿しない」ことなどを相手に約束させます。
ネットトラブルを他人に話さないようにする口外禁止条項を入れることで、慰謝料をより多く支払うよう圧力をかけることも検討します。
4.刑事告訴
犯人を刑事裁判で裁いてもらうには、損害賠償請求とは別に刑事告訴する必要があります。
開示請求で相手の個人情報をつきとめることは、警察を動かすうえでも重要です。
裁判所が住所氏名の開示を認めるほど違法性が明らかという証明にもなりますし、警察としても捜査対象を探す手間が省けます。
最終的には不起訴処分、あるいは罰金刑となることが多いものの、家宅捜索や取調べなどの負担を負わせることで、事実上の再発抑止力が生じます。
5.まとめ
風俗嬢への誹謗中傷は下劣な話題になることが多いために、被害者の心理的な傷も大きくなります。
粘着質な犯人は投稿をいくら削除しても、しつこく書き込みを繰り返してきます。
センシティブな問題ですから周囲の人に相談しづらく、むしろ友人や同僚に風俗勤務がばれないかという不安が被害を拡大させてしまうのです。
投稿者をつきとめることは、被害を慰謝料で金銭的に回復するだけでなく、投稿による被害再発を根本的に解決するうえでも効果的です。
発信者情報開示請求では失敗するリスクが付きまとってしまいますが、できる限り早く動くことで成功確率を上げることができます。ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。