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誹謗中傷の重要知識

どんな言葉なら名誉毀損?事実適示と意見論評の具体例

名誉毀損には二つの類型があります。

  • 事実適示型:証拠で存否を決められる事項の主張による名誉毀損
  • 意見論評型:証拠による証明になじまない批評や論議による名誉毀損

発信者情報開示請求をするとき、できうる限り事実適示型だと主張します。
意見論評型は事実適示型よりも「違法性阻却事由」、名誉毀損を適法化してしまう制度に法的措置を阻まれてしまうリスクが高いためです。

[参考記事] 名誉毀損の損害賠償|意見論評型より事実適示型で請求すべき理由

しかし、言葉というものはあいまいです。前後の文脈や発言に至るまでの経緯はもちろん、投稿を取り巻く周辺事情を考えなければ、「事実」なのか「意見」なのかは決められません。

名誉毀損に基づく発信者情報開示請求の見通しを立てるうえで、まず考えなければならない事実適示型と意見論評型。
どのような言葉がどちらに該当するのか、裁判所の判断や具体例をもとに説明します。

1.間接的・婉曲的な言葉

普通に読んで証拠で証明できるような事実を主張しているのであれば、もちろん事実適示型です。
ポイントは、日本語らしい間接的・婉曲的表現でぼかしていても、事実主張と解される可能性があることです。

(1) 「A氏は極悪人。死刑よ」

事実適示型の範囲について、形式にとらわれずに広く認めた平成9年9月9日判決、いわゆる「ロス疑惑事件」では、最高裁は上記のような記事見出しを事実適示だとしました。

「当該部分の前後の文脈や、記事の公表当時に一般の読者が有していた知識ないし経験等を考慮し、右部分が、修辞上の誇張ないし強調を行うか、比喩的表現方法を用いるか、又は第三者からの伝聞内容の紹介や推論の形式を採用するなどによりつつ、間接的ないしえん曲に前記事項を主張するものと理解されるならば、同部分は、事実を摘示するものと見るのが相当である

見出し自体には、A氏が殺人など死刑になるような犯罪をしたとの記載はありません。
しかし、その記事は殺人未遂で捜査が行われるなか、「自供したら、きっと死刑ね」など具体的にA氏が犯罪を行ったのだろうと推測する取材相手の発言を紹介するものでした。

世間的な殺人の嫌疑や記事内容の詳細から、記事見出しは証言を紹介する形式を用いた事実適示だと判断されたのです。

ちなみにこの判決では、

「間接的な言及は欠けるにせよ、当該部分の前後の文脈等の事情を総合的に考慮すると、当該部分の叙述の前提として前記事項を黙示的に主張するものと理解されるならば、同部分は、やはり、事実を摘示するものと見るのが相当である。」

として、黙示的主張も事実適示になるとすらしています。

(2) 「Bさんほど清純な女性はいないでしょう。夜の街の大金持ちだもの」

ネット誹謗中傷では、ロス事件判決が例示した誇張・強調・比喩などを用いた間接的・婉曲的表現による事実適示は多いものです。
小見出しに記載した例文をみてみましょう。

「Bさんほど清純な女性はいない」は反語表現です。形式的な意味と実際に込められたニュアンスは真逆で、真の意味を誇張・強調しています。
「夜の街の大金持ち」という比喩は、風俗で働いている事実を適示しています。

こうして、「Bは淫らで風俗で働いている」だとする事実適示型の名誉毀損だと評価できるのではないでしょうか。

2.推論・可能性

「~ではないだろうか?」で文末を終わらせても、「疑問に思っただけで事実だとは言ってない」と言い訳できるとは限りません。
ただし、具体的事情によっては意見論評だとされてしまう余地があります。

(1) 「犯罪小説を創作し、自ら演じようとしたのではないか?」

ロス事件では他にも多数の名誉毀損判決がされています。

たとえば平成10年1月30日最高裁判決では、

「新聞記事中の名誉毀損の成否が問題となっている部分において表現に推論の形式が採られている場合であっても、当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、当該部分の前後の文脈や記事の公表当時に右読者が有していた知識ないし経験等も考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を右推論の結果として主張するものと理解されるときには、同部分は、事実を摘示するものと見るのが相当である

として、小見出しに記載した趣旨の記事は、犯罪動機を推論する結果として、犯罪を犯した事実を適示していると解しました。

(2) 「わいせつ行為をしている可能性がある」=意見論評

事実が生じた「可能性がある」とまで書き込んだにもかかわらず、関連する具体的な事情から意見論評とした裁判例もあります。

東京地方裁判所平成23年11月25日では、学習塾に対して「塾講師が生徒にわいせつ行為をしていたのではないか」「他の講師も生徒にわいせつ行為をしている可能性がある」と指摘する投稿が問題となりました。

一連のロス事件判決の考え方からすれば、「塾講師が生徒にわいせつ行為をした」事実の適示と言えそうです。
しかし、この投稿がされた時期ときっかけが、結論を意見論評に傾かせました。

投稿の際、塾長が未成年にお金を渡し児童ポルノを撮影したとして逮捕され、300件もの余罪を自白したことがニュースになっていたのです。しかも、投稿者はその学習塾チェーンの塾に娘を通わせていました。

東京地裁は、余罪の可能性に関する投稿は、犯行に気付かず塾長という地位を与えていた指導監督体制を前提事実とする意見であり、

「原告の使用者としての社員教育や社員の管理監督の杜撰さ、社内規律の維持に対する疑問、生徒を預かり育てるという教育関係機関としての自覚の欠如を、痛烈に非難、糾弾し、その責任を問う旨の論評であると理解でき、したがって、事実を摘示したのではない

として、学習塾としての社会的責任を追及する意見論評だとしたのです。

ちなみに、このケースでは逮捕された塾長は裁判中に有罪判決を受け、意見論評の前提事実が真実だとの証明がされています。

3.法的な見解

法的な見解の表明それ自体は、原則として意見論評型になると最高裁平成16年7月15日判決が判示しています。

「法的な見解の表明には、その前提として、上記特定の事項を明示的または黙示的に主張するものと解されるため事実の適示を含むものというべき場合があることは否定しえないが、法的な見解の表明それ自体は、それが判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても、そのことを理由に事実を適示するものとは言えず、意見ないし論評の表明に当たるものというべきである。」

そのため、法律用語を用いた名誉毀損は、意見論評型に当たるとされやすい傾向が強くなっています。
一方で、社会情勢や文脈など具体的な事情によっては、事実を主張した言葉と扱われる法律用語も生じています。

(1) 「詐欺、泥棒!」

典型的な「法的な見解の表明」としては、「詐欺」や「泥棒」などが挙げられます。
たとえば、誰かを非難するとき「詐欺も同然だ」「ドロボーみたいなものだ」など、法律用語や刑法犯の言葉を使って誰かを非難することは多いでしょう。

もちろん、実際に逮捕されている・実刑判決を受けているのであれば、逮捕されている事実や実刑判決を受けた事実を適示したと言えます。

しかし、「詐欺」や「泥棒」など犯罪・法律違反に当たる言葉を用いていたとしても、一般の方は厳密な意味での法律上の詐欺や窃盗などに当たる行為をしていると主張しているわけではないでしょう。
「思っていたものと違った」「私は不利益を受けた分、相手は利益を得たのが気に入らない」など感情的な意味合いがほとんどのはずです。

そのため、詐欺や泥棒といった言葉は意見論評とされがちなのです。

(2) 「セクハラ野郎だ」

法的な言葉が世間一般に用いられていくうちに、特定の事実関係を指摘するものと扱われることもあります。

近年、取りざたされている言葉が「セクハラ」です。
もとは「セクシャルハラスメント」であり、「職場における性的言動や地位格差に関連して労働者に不利益を与えること」を意味する法的用語です。

たとえば東京高等裁判所の平成24年4月18日判決では、

「セクハラという言葉は、特に女性を不快な気持ち、苦痛な状態に追い込み、人間の尊厳を奪う性的な言葉や行動を意味しており、今日においては、セクハラという言葉のみから、その具体的な事実の摘示がなくとも、女性に対して人間の尊厳を奪うような性的な言葉を発し、行動をした者であると推測することができる」

としてセクハラという言葉を事実適示と認定しています。

もっとも、この事例も塾講師の事件と同じく、特殊な事情がありました。
投稿と合わせ貼られていたハイパーリンク先の記事には、セクハラと評価されるであろう事実が詳細に記載されていたのです。

あなたを指して「Aはセクハラ・パワハラ野郎だ」という書き込みがあったとしても、事実適示だ!と思い込まないでください。
まずは前後の投稿内容を保存し、書き込まれるきっかけとなったと推測される事実関係をメモにして、客観的な証拠を集めておきましょう。

4.まとめ

名誉毀損に基づいて発信者情報開示請求をしようとするとき、必ずと言っていいほど違法性阻却事由は検討事項に上がります。
そして、問題となる投稿が事実適示か意見論評か、ひいては真実性を否定できるかも専門的な判断が必要となります。

このコラムで説明したポイントはあくまで目安です。あなたに対する名誉毀損を取り巻く諸事情がどのようなものかにより、最終的な請求の成否はもちろん、その道筋となる名誉毀損の類型や違法性阻却事由の有無も変わります。

インターネットの誹謗中傷でお困りの皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

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