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誹謗中傷の重要知識

「感想・議論で傷つけられた!」意見論評型の名誉毀損

ネット社会では、例えば訪れたラーメン店や購入したスマホのレビューを書き込み、その口コミが別のお客の参考になることも多くなっています。

しかし、「ラーメンが美味しくなかった」「店が汚かった」「思っていたよりスマホの使い勝手が悪かった」など、レビューされた側としては不満に思う内容を書き込まれるケースも日常茶飯事です。

ここでは、物事への感想や評価によって他人の名誉を傷つける投稿、いわゆる「意見論評型」の名誉毀損について、どの程度から違法となるのかを解説します。

1.「意見論評型」の名誉毀損とは?

法律上の「名誉」とは、他人からの社会的評価のことを指します。
意見論評型の名誉毀損は、事実そのものではなく、事実への「感想」や「批評」によって他人の社会的評価を低下させるものです。

(1) 刑法の要件|事実適示が必要

刑法の名誉毀損罪では「事実適示」が要件となっています。
事実の指摘だけでなく、感想や評価によっても他人からの評価は低下しますが、そのときは侮辱罪とされます。

刑法第230条第1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する

刑法第231条
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留又は科料に処する。

(2) 民事の要件|事実適示を問わない

インターネット上のレビューでは、事実それ自体よりも「感想」により名誉が害されることが多いでしょう。
例えば、「ラーメンに虫が入っていた」なら事実適示ですが、「ラーメンが不味かった」は感想です。

最高裁は平成9年9月9日に「社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば、これが事実を摘示するものであるか、又は意見ないし論評を表明するものであるかを問わず」民事上の名誉毀損になりえる、と判決し、意見論評型の名誉毀損が認められると明らかにしました。

2.意見論評型になるケース

実務上、意見論評型と事実適示型の区別はあいまいで、しばしば激しく争われます。意見論評型は事実適示型よりも法的措置が取りづらいためです。

(1) 意見論評型と事実適示型の区別

最高裁平成16年7月15日判決が、意見論評型・事実適示型それぞれの名誉毀損の定義を整理しています。

  • 意見論評型:証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議など
  • 事実適示型:証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的または黙示的に主張するものと理解されるとき

(2) 意見論評の具体例

意見論評と事実適示のどちらに当たるか、はっきりしないことは珍しくありません。

平成9年判決によれば、投稿の中にはっきりと表現されていなくても、文脈から常識的に考えて「事実」を主張していると理解できれば、事実適示型になります。
一方、表現の中に「事実」のように思える言葉があったとしても、文脈や常識からすれば「意見」だとされることもあります。

たとえば、「詐欺も同然だ」「泥棒みたいなものだ」など、法律用語や刑法犯の言葉を使って誰かを非難することがあります。
しかし、その意味は何かをただ非難するものにすぎず、厳密な意味での詐欺や窃盗を主張しているわけではないでしょう。

このように、法律用語を用いた名誉毀損は、意見論評型に当たるとされやすい傾向が強くなっています。

もっとも、法律違反を指摘するような言葉でも、「ブラック企業」「セクハラ」などのように、世間での意味合いや当該投稿や閲覧者の反応などの文脈を踏まえ、意見論評型ではなく事実適示型とされるケースもあります。

[参考記事] どんな言葉なら名誉毀損?事実適示と意見論評の具体例

3.意見論評型の違法性阻却事由

違法性阻却事由とは、名誉毀損に該当する表現であっても適法化して、言論の自由を守る制度です(刑法230条の2第1項)。

平成9年9月9日の最高裁判決は、意見論評型における以下4つの違法性阻却事由を明らかにしました。

  • ①公共の利害に関する事実に係ること(公共性)
  • ②専ら公益を図る目的に出たこと(公益目的)
  • ③意見・論評の前提としている事実が重要な部分において真実であることの証明があること(真実性)
  • ④人身攻撃に及ぶなど意見論評としての域を逸脱したものでないこと

社会的評価を低下させる書き込みであっても、これら4つの要件全てを満たすと、違法ではないとして損害賠償請求などができなくなります。
逆に言えば、1つでもアウトだと証明できれば法的措置が可能となるのです。

それぞれの要件の詳細を説明します。
また、詳しくは以下のコラムもご覧ください。

[参考記事] 名誉毀損の違法性阻却事由とは?

(1) ①公共性・②公益目的

①話題が客観的に見て多数の人々の利害にかかわるものか、②主に公的な利益のためという意図があったかがを問題としますが、実務上、言論の自由を守るという制度目的もあってか、あっさりと認められてしまうことがほとんどです。

風俗嬢への誹謗中傷など、下劣な話題や一方的な人格攻撃では否定されることもあります。

(2) ③前提事実の真実性

意見論評の「前提となっている事実」が本当であることが、事実上、違法性阻却事由の決め手となります。

意見論評型の名誉毀損は「証拠による証明になじまない」ものです。意見論評それ自体が正しいか間違っているかは、裁判所が判断するものではありません。
本当かどうか争うのは、あくまで名誉毀損となった意見や論評が「前提としている事実」となります。

これが、意見論評型の名誉毀損を理由に法的措置を取るうえで大きな障害となっています。

「株式会社Aは最低だ」と書かれているだけでは、「最低」との意見を持つに至った前提となる根拠が分かりません。その前提事実の真偽を争うこと自体ができないのです。

意見論評の前提となる事実が書き込まれていればいいのかというと、そう簡単にはいきません。
インターネット上のレビューや口コミは、投稿者の体験・経験に基づく感想だと推測されることがほとんどだからです。

「ラーメン店Bでラーメンを食べたがおいしくなかった」という口コミは、「おいしくなかった」という部分がB店の名誉を毀損する意見論評です。
このとき、前提事実は「B店でラーメンを食べたこと」です。ラーメンを実際に食べているのであれば、前提事実は真実としか言いようがありません

もちろん、現実には食べていないのに嫌がらせで書き込んでいるケースもあり得るでしょう。
しかし、体験もなくウソの感想を書き込んでいると証明するには、投稿内容と実際に提供しているモノやサービスとの矛盾・監視カメラの映像など客観的な証拠など、揃えづらい事情・資料が必要となってしまいます。

[参考記事] 本当のことだと名誉毀損にならない?違法性阻却事由の真実性

(3) ④非逸脱性

④の要件は意見論評型独自のものです。公共性・公益目的があり、前提事実が本当だったとしても法的措置が取れる余地が生じます。

もっとも、事実適示型であれば違法性が阻却されるはずのものを違法だとしてしまうのですから、過激な言葉が用いられていても正当な意見論評の枠内にあるとして、意見論評を逸脱すると評価されるケースは稀となっています。

過激な人格攻撃を交えた投稿を執拗に書き込んでいたケースなど、よほど悪質でないと人身攻撃に及ぶレベルだとはされないでしょう。

とはいえ、最近ではSNSを中心に社会問題に興味を持った人々が群集心理を発揮し、攻撃的な表現が過激化する現象が生じています。
旧来型の粘着行為やストーカー、炎上などに限らず、この要件が言論の自由と名誉毀損のバランスを考えるうえで重要となっていく可能性はあります。

4.意見論評型の故意・過失

意見論評の前提となる事実がウソだと証明できたとしても、投稿者が真実だと信じていたならば故意・過失がないとして法的措置が取れないという理論が判例で認められています。
もっとも、インターネット上の誹謗中傷では勘違いの根拠は薄弱でしょうから、そうなることはまずありえないでしょう。

違法な行為をしたとしても、わざとやったわけでもなく不注意も認められないのであれば責任を負わないとされるのが、法律の大原則です。
名誉毀損でも、最高裁昭和41年6月23日判決が事実適示型の名誉毀損について、投稿内容が真実だと証明できなくても「真実であると信ずるについて相当の理由がある」ならば、故意・過失がなく損害賠償請求できなくなるとしています。

そして、最高裁平成9年9月9日判決が意見論評型についても「意見ないし論評の前提としている事実が真実であることの証明がないときにも、」「真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定される」と判示したのです。

ところが、実際のところ、インターネット上にデマをもとに批判を書き込んだケースで故意・過失が否定されることはありえません

最高裁は昭和44年6月25日判決で、真実だと信じた相当の理由があったというためには、「確実な資料・根拠」が必要だとしています。報道機関の取材レベルが求められるのです。
最高裁は平成22年3月15日決定でインターネット上の名誉毀損でも、この厳しい基準を緩める必要はないと明らかにしています。

一般人が言う「確実な資料・根拠」というのは、たいてい「ネットで大勢の人間が同じようなことを書き込んでいた」程度のものであり、よほどのことが無い限り故意・過失が否定されることはないでしょう。

なお、削除請求では故意・過失は問題となりません。
発信者情報開示請求でも故意・過失は条件となっていませんが、その後の損害賠償請求では故意・過失が求められることになります。

5.まとめ

意見論評型の名誉毀損は、刑事上では名誉毀損罪よりも軽い侮辱罪にしかならないものの、削除請求や損害賠償請求などの民事上の請求では名誉毀損として扱われています。

もっとも、名誉毀損への法的措置をシャットダウンする違法性阻却事由が事実適示型とは異なるせいで、法的措置が取りづらいという難点があります。

名誉毀損を理由に請求するときは、投稿内容が具体的事実を指し示す事実適示型だと主張し、できる限り意見論評型による構成を回避することが大切です。
(もし、投稿内容が抽象的すぎて事実適示型と言えないときに初めて意見論評型による名誉毀損を主張することになります。)

[参考記事] 名誉毀損の損害賠償|意見論評型より事実適示型で請求すべき理由

違法性阻却事由を否定するには専門知識が欠かせません。是非お気軽に弁護士にご相談ください。

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