ネットで誹謗中傷を見つけたらどうする?URL確認の意味
インターネットで自分に対する誹謗中傷を見つけて、損害賠償請求をしたいと考えたなら、まずはそのURLを確認する必要があります。
閲覧ソフト(ブラウザ)の上部に表示されている文字列がURLです。クリックやタップをすると、その文頭に「http://」または「https://」という文字列が出てくるはずです。
URLは、個別の投稿やサイトなどのインターネット上における所在地です。
どの投稿に対して削除請求や発信者情報開示請求をしたいのかを明らかにするためには、URLは欠かせないものとなります。
法律相談でも、URLを事前に弁護士に伝えることが必須です。
ここでは、ネット誹謗中傷対策におけるURLの重要性について説明します。
1.URLとは?
インターネットを見ているときに画面の上部に表示される文字列がURLです(「Uniform Resource Locator」の略称)。
サイト情報がインターネット上のどこにあるのか、その所在地を指し示しています。
私たちはURLを手掛かりに、インターネットを通じてサーバーから情報を引き出して閲覧し、逆に情報を送信して投稿しているのです。
すなわち、URLはインターネット上の住所のようなもので、誹謗中傷対策で真っ先にポイントとなります。
【IPアドレスやドメインとの関係】
投稿の特定や発信者情報開示請求の中では、URLのほかに「IPアドレス」や「ドメイン」といった用語も出てきます。
IPアドレスは、情報を保管するサーバーの識別番号であり、まさしく情報の「所在地」を示します。発信者情報開示請求では、URLなどで特定した投稿から発信元のIPアドレスをたどっていく手法が定番となっています。
ドメインは、IPアドレスが番号やアルファベットを並べただけで分かりづらいため、意味の分かる文字列で表記したものです。
URLはIPアドレスやドメインが指し示す、ネット情報の所在地を表示するための「形式」「記述方法」が本来の意味です。とはいえ、一般的にはURLも「インターネット上の住所」という意味で用いられています。
2.URLから始まる誹謗中傷対策
誹謗中傷に対して何らかのアクションを起こすには、インターネット上の無数の投稿のうちどれが問題なのか、関係者に分かるように特定しなければいけません。
「どの投稿を削除するのか」「どの投稿をした人間の個人情報を開示するのか」
サイト管理者に対して任意請求するにせよ、裁判所に対して法的請求するにせよ、URLによる投稿の特定は不可欠となります。
(1) サイト管理者への任意請求で必要
実名や住所、電話番号を記載しての誹謗中傷など、名誉権やプライバシー権侵害が明白なケースでは、サイト管理者がメールやフォームなどによる削除依頼に任意で応じることもあります。
URLはその依頼フォームなどへの記入が求められる情報の代表例です。
たとえば、2ちゃんねるなどの匿名掲示板では、運営スタッフやボランティアが削除フォームからの依頼に応じて書き込みの削除を行っていますが、フォームには正確なURLの記入が求められています。
スレッド名や板番号、投稿番号など掲示板にも書き込みを特定する足掛かりとなるものはありますが、URLはインターネット全般で最も正確でわかりやすい特定手段だからです。
業界団体が定めたいわゆるテレサ書式(送信防止措置依頼書・発信者情報開示請求書)でも、それぞれ一番上の項目である「掲載されている場所」「貴社が管理する特定電気通信設備等」において、URLを使って投稿を特定します。
(2) 裁判所を通じた法的請求でも必要
削除請求や発信者情報開示請求を裁判所に求めるとき、URLは提出書類に必ず記載します。
裁判所が法的強制力を行使する対象を特定するには、当然、厳密さが求められるからです。
URLは、誰に対して裁判手続をすべきかを調査するための手掛かりにもなります。
URLの一部、ドメイン名やホスト名と呼ばれる部分を専用の検索サイトに入力することで、サイト管理者やサーバー管理者を調査することができます。
(3) 弁護士へ相談前にもURLを見るべき
さらに、URLがなければ法律相談は始まらないといっても言い過ぎではありません。
事前にメールで問題となる投稿のURLを送付するなどして、弁護士に教えておきましょう。その理由は以下の通りです。
権利侵害が認められるかの見通し
削除請求や発信者情報開示請求、ひいては損害賠償請求ができるのは、違法な権利侵害が認められるケースに限られます。悪口だからと言って、なんでも請求が認められるわけではありません。
弁護士は法律や裁判例にもとづいて、問題となる投稿に対して削除や個人情報開示できるか、法律相談の前から見通しを立て始めます。
この見通しをより正確にするためには、事前に弁護士にURLを伝えて投稿そのものを直接確認させる必要があるのです。
URLを伝えると、弁護士が投稿先のサイト全体を確認できるようにもなります。
投稿の違法性は単独では判断しきれません。前後の書き込みや他人との掛け合いなど、流れや文脈、全体的な経緯も踏まえて書き込みによる権利侵害が生じたと言えるかが判断されます。
そのため、弁護士としては、相談前に書き込みがされたサイトにアクセスしてその全体的な内容を確認しておきたいのです。
投稿を写真撮影しても不十分で、あくまでURLを知らせておく必要がある理由はここにあります。
サイト管理者の調査
URLを弁護士に事前に伝えておくメリットは、サイト管理者を事前に確認できることにもあります。
サイト管理者の誹謗中傷対策への協力姿勢はまちまちで、任意で発信者情報開示請求に応じてくれるところもあれば、削除請求でも裁判所の仮処分(通常の訴訟よりも手続を簡単にした手続きで、サイト管理者に対して削除を命じる請求)が下りなければ動かないサイトもあります。
サイト運営者が海外事業者であるケースや海外サーバーにサイト情報が保管されているケースでは、投稿そのものの削除が難しく、検索結果の削除請求が選択肢に入ります。
サイト管理者の調査のためにもURLは不可欠であり、弁護士が相談前に大まかな方針を立てられるようにするためにも、事前にURLを伝えておくべきなのです。
3.URLを確かめる方法
URL、はインターネットに接続するときに用いる「ブラウザ(Google ChromeやMicrosoft Edgeなどインターネットを閲覧するためのソフトウェア)」に表示されます。
ブラウザから投稿を確認できるのであれば、その画面上部に表示される文字列がURLとなります。
しかし、TwitterなどSNSのスマホアプリはブラウザではありません。そのSNS専用のソフトウェアであり、ブラウザのようにURLが常に表示されているものは珍しいでしょう。
とはいえ、SNSの投稿もインターネット上に存在する情報ですから、ブラウザからもアクセスできるはずです。
ブラウザでGoogle検索など検索エンジンに、アカウント名や投稿内容の一部、実名などが書き込まれてしまっているケースならばその実名を入力して検索してみましょう。
アプリにはURLを確認するために役立つ機能が備わっていることもあります。例えば、投稿URLコピー機能はないでしょうか。
そのアプリ専用の検索機能を使いつつ、法律相談の予約電話で話しながら投稿を特定することも考えられます。
4.投稿が削除されてしまったら
通常、投稿が削除されてしまうとURLも分からなくなるため、投稿者の特定は絶望的になってしまいます。
もっとも、削除後でもURLを確認できるケースもあります。
ひとつは、ウェブアーカイブにサイト情報が残っている場合です。
ウェブアーカイブとは、インターネット上の情報を後世に残すために保管しているサイトです。そこに削除された誹謗中傷を含むサイトが保存されていればURLも残っています。
海外では「Wayback Machine」、日本では「ウェブ魚拓」というウェブアーカイブが有名です。
もうひとつは、削除される前にサイトを印刷しておいた場合です。
ただし、印刷されたサイトにURL全体が記載されていなければ、裁判所は証拠として認めないおそれもあるため注意が必要です。
実際、知財高裁平成22年6月29日判決は、URLの記載のない印刷物に証拠としての価値を認めていません。
- 印刷設定画面で「ヘッダーとフッター」にチェックをする
- 印刷されたものにURLが全部表示されたか確認する
- 画像やpdfなどによる保存データも残しておく
URLを含むサイト内容を印刷して証拠を残すには、上記のポイントに注意してください。
5.まとめ
URLは、「どの投稿が問題なのか」という誹謗中傷対策の出発点を明らかにするために不可欠です。
サイト管理者への請求や裁判手続はもちろん、弁護士に相談するうえでも無くてはならないものであり、誹謗中傷を見つけたら真っ先に確認してください。
そのうえでコピー&ペーストや印刷により証拠として残し、弁護士に伝えてスムーズな法律相談の下準備を整えましょう。