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プライバシー侵害とは|要件・裁判例・侵害を受けた場合の対処法

他人に関するプライベートな事柄をSNS等のインターネット上に無断で投稿する行為は「プライバシー侵害」に当たる可能性があります。

[参考記事] プライバシー侵害で訴えられてしまった!示談金の相場は?

一方、インターネット上でプライバシー侵害の被害を受けた場合、サイト管理者に対して投稿の削除を求めたり、加害者に対して損害賠償を請求したりすることができます。

プライバシー侵害が成立するかどうかを判断するに当たっては、過去の裁判例を分析することが役立ちます。
弁護士にご相談のうえでプライバシー侵害の有無を検討し、早期の被害回復に向けた対応を行いましょう。

今回は、プライバシー侵害の要件や裁判例、インターネット上でプライバシー侵害を受けた場合の対処法などを解説します。

1.プライバシー権とは?

「プライバシー権」とは、「私生活上の事柄をみだりに公開されない法的保障・権利」と一般に解されています。また、開示・訂正・削除請求を通じて、自己に関する情報をコントロールする権利もプライバシー権に含まれるとの見解が有力に主張されています。

プライバシー権は、日本国憲法13条後段に規定される「幸福追求権」の一環として保障されています。したがって、他人のプライバシー権を不当に侵害する言動は「不法行為」(民法709条、710条)と評価され、加害者は被害者に対して損害賠償責任を負います(間接適用説)。

ただし、プライバシー権は表現の自由(日本国憲法21条1項)と衝突するケースも多く、どちらを優先すべきかがしばしば問題となります。もしプライバシー権と表現の自由が衝突した場合には、両者の利益を比較考量したうえで、プライバシー侵害の成否が判断されます。

[参考記事] 誹謗中傷と正当な批判の違い|表現の自由で保障される言論の範囲

2.プライバシー侵害の要件

後述する『宴のあと』事件(東京地裁昭和39年9月28日判決)では、以下の3つの要件を満たす事実が公開され、本人に不快・不安の念を覚えさせた場合に、プライバシー侵害による不法行為が成立すると判示されています。

① 私生活上の事実、または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあること
② 一般人の感受性を基準にして、本人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められること
③ 一般の人々に未だ知られていないこと

プライバシー侵害の場合は名誉毀損とは異なり、暴露された事実が真実であったとしても違法性が阻却されることはなく、不法行為が成立する点がポイントです。

反対に、暴露された事実に全く信ぴょう性がない場合は、本人のプライバシーに関する情報を推知させる要素がないとして、プライバシー侵害が不成立と判断される可能性があります。

3.プライバシー侵害に関する代表的な裁判例

プライバシー侵害に関するリーディングケースとも言える裁判例は、三島由紀夫の長編小説における表現が問題となった東京地裁昭和39年9月28日判決(『宴のあと』事件)です。

また、最高裁平成6年2月8日判決(ノンフィクション『逆転』事件)では前科に関する事実の暴露が、最高裁平成15年3月14日判決では逮捕者の少年に関する実名報道について、それぞれプライバシー侵害の有無が問題となりました。

これら3つの裁判例について、事案の概要・結論・判断のポイントなどを紹介します。

(1) 東京地裁昭和39年9月28日判決(『宴のあと』事件)

『宴のあと』は、政治家と高級料亭の女将による愛や政治活動を描いた、三島由紀夫のフィクション小説です。しかしフィクションとは言うものの、実在の政治家と高級料亭の女将をモデルにして、その人生をトレースした作品であることは周知の事実でした。

『宴のあと』のモデルとされた元外交官・外務大臣である原告は、原告がモデルであることを読者に意識させながら、空想・想像によって原告の私生活を「のぞき見」するような描写を行う被告の表現方法を指摘し、被告に対して不法行為に基づく損害賠償を請求しました。

東京地裁は、前述のプライバシー侵害の要件を提示したうえで、被告の原告に対するプライバシー侵害に基づく損害賠償責任を認めました

判示の中で東京地裁は、

「小説なり映画なりがいかに芸術的価値においてみるべきものがあるとしても、そのことが当然にプライバシー侵害の違法性を阻却するものとは考えられない

などと述べ、表現の自由とプライバシー権の衝突について、かなり詳細に議論を展開している点が注目されます。

(2) 最高裁平成6年2月8日判決(ノンフィクション『逆転』事件)

『逆転』は、実際に起こった傷害致死事件についての取材をベースに、伊佐千尋を著者として刊行されたノンフィクション作品です。原告は、『逆転』の中で自らの前科に関係する事実を実名で公表されたことについて、著者である被告に対し不法行為に基づく慰謝料を請求しました。

最高裁は、前科等にかかわる事実の公表が許されるかどうかは、「公表されない法的利益」と「公表する理由」のどちらが優越しているかによって判断すべきという比較衡量の規範を示しました。

そして本件について、最高裁は以下の事実を考慮したうえで、原告に対する被告によるプライバシー権侵害を認めた原審判決を支持しました。

  • 傷害致死事件の発生およびその刑事裁判から、『逆転』が刊行されるまでの12年余りの間、原告が社会復帰に努め、新たな生活環境を形成していたこと
  • 原告は、地元を離れて大都会の中で無名の一市民として生活しており、公的立場にある人物のように、社会活動に対する批判や評価の一資料として前科に関わる事実の公表を受忍すべき立場にないこと
  • 被告の主張する『逆転』の目的を考慮しても、原告の実名を明らかにする必要はなかったこと など

(3) 最高裁平成15年3月14日判決(少年による連続殺人事件の報道)

少年によって引き起こされた殺人・強盗殺人・死体遺棄等について、『週刊文春』に掲載された記事によるプライバシー権侵害が問題となった事案です。

『週刊文春』は罪に問われている少年を仮名で表記していたものの、その仮名は実名と類似したものでした。また、法廷での様子・犯行態様の一部・経歴・交友関係等が詳細に記載されており、もともと少年のことを知っていた人からすると、記事で描写されている少年を容易に特定し得るような内容となっていました。

少年は、『週刊文春』の出版社に対して、上記の描写によるプライバシー権の侵害等を理由に、不法行為に基づく損害賠償を請求しました。

最高裁は、ノンフィクション『逆転』事件の判示を引用し、プライバシーに関する事実を公表されない法的利益と公表する理由のどちらが優越するかを比較衡量して、プライバシー権侵害の成否を判断すべきと判示しました。

さらに最高裁は、以下の事情を具体的に考慮したうえで、比較衡量を行うべきであると指摘し、さらに審理を尽くさせるため、原審判決を破棄して高裁へ差し戻しました

  • 対象者の年齢
  • 対象者の社会的地位
  • 犯罪行為の内容
  • 公表されることによって、対象者のプライバシーに属する情報が伝達される範囲
  • 対象者が被る具体的被害の程度
  • 記事の目的や意義
  • 公表時の社会的状況
  • 情報を公表する必要性

4.インターネット上でプライバシー侵害を受けた場合の対処法

SNSや匿名掲示板など、インターネット上でご自身のプライバシー権を侵害するような投稿を発見した場合、投稿の削除や損害賠償請求による被害回復を図りましょう。

(1) サイト運営者に投稿削除を申請する

SNSや匿名掲示板などの運営会社は、多くの場合、誹謗中傷やプライバシー権侵害等に当たる投稿の削除申請を受け付けるフォーム等を設置しています。

運営会社による投稿の削除は、各社が設けている削除ガイドラインに従って行われていますので、ガイドラインの内容を踏まえて削除申請を行いましょう。

(2) 裁判所に投稿削除の仮処分を申し立てる

SNSや匿名掲示板などの運営会社に対して削除申請を行っても、運営会社がすんなり削除に応じてくれるとは限りません。
その背景には、表現の自由とプライバシー権が衝突する場合は削除すべきかどうかの判断が難しく、運営会社が静観の姿勢をとるケースが多いなどの事情があります。

運営会社が投稿の削除に応じない場合には、裁判所に対して投稿削除の仮処分を申し立てるのが次なる手段です。

プライバシー権侵害に当たる投稿を放置することにより、本人に著しい損害または急迫の危険が生じるおそれがある場合には、裁判所は運営会社に対して投稿削除の仮処分命令を発令します(民事保全法23条2項)。仮処分命令が発令されれば、運営会社も速やかに投稿の削除に応じる可能性が高いです。

裁判所への仮処分申立てについては、法的な観点からきちんと準備を整えて臨む必要がありますので、弁護士にご相談ください。

[参考記事] ネットで誹謗中傷された場合の削除方法と削除費用

(3) 投稿者に損害賠償を請求|匿名投稿者の特定

プライバシー権侵害によって被った精神的損害等については、加害者に対して損害賠償を請求できます(民法709条、710条)。SNSの匿名アカウントによる投稿や、匿名掲示板への投稿であっても、「発信者情報開示請求」(プロバイダ責任制限法4条1項)等を通じて投稿者を特定できる場合があります。

プライバシー権侵害を行った投稿者を特定して、慰謝料等の損害賠償を請求したい方は、お早めに弁護士までご相談ください。

[参考記事] ネットで誹謗中傷した犯人(投稿者)を特定できる?

5.まとめ

インターネット上でプライベートな事実を勝手に公表された場合、ご自身のプライバシー権が侵害されている可能性があります。

プライバシー権侵害の投稿を放置すると、ご自身に関する根拠のない噂が独り歩きして、風評被害が拡大してしまいかねません。そのため、できる限り早期に弁護士へご相談いただき、被害の回復を図ることが大切です。

弁護士は、プライバシー権侵害に当たる投稿の削除や、投稿者を特定したうえでの損害賠償請求等につき、被害に遭われた方を一貫してサポートいたします。

インターネット上でのプライバシー権侵害による被害にお悩みの方は、お早めに弁護士までご相談ください。

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